「敵の技術すごい」無人機飛来で北朝鮮国民…金与正の宣伝は逆効果
北朝鮮は、韓国が無人機を使って深夜の平壌市内に「反共和国(反北朝鮮)政治謀略扇動ビラ」を散布したと主張し、激しく反発している。しかし、国民の反応は微妙だと、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が伝えている。
咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋によると、12日午前には職場で全従業員が参加する集会が開かれ、「無人機侵入」に関する外務省声明と金正恩総書記の妹、金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党副部長の談話の内容が伝えられた。
職場内の朝鮮労働党委員会の初級党書記(組織のトップ)は次のように力説したという。
「首都の上空に無人機を侵犯させて謀略ビラまで散布した韓国は、最も敵対的なならずもの国家、極悪な仇だ。クズの集団に対する敵愾心を持たねばならない」
職場から一歩外に出ても、状況は同じだ。13、14日の両日、街宣車が朝から晩まで街中を走り、外務省声明と金与正氏の談話を読み上げ、あらゆる表現を用いて韓国を口汚く罵っている。
あまりの勢いに情報筋も驚きを隠せないようだ。
「以前から新聞やテレビ、ラジオは韓国に対して、悪意のある表現ばかり使って非難していたが、ここまで罵詈雑言が飛び交ったことはなかった」
そして当局の意図は、人々が韓流ドラマなどを密かに見ながら抱くようになった「韓国に対する憧れを断ち切ろう」とすることにあると指摘した。
(参考記事:北朝鮮の女子高生が「骨と皮だけ」にされた禁断の行為)
ところが、プロパガンダを斜め読みすることが身についている北朝鮮の人々は、当局の言うことを鵜呑みにしない。
平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋は、12日に同窓生との食事の場で、無人機の話が出た折に、このような話になったと述べた。
「(韓国の)無人機の技術はすごい」
同窓生も彼の考えに同意し、ひそひそと次のように述べたという。
「ソウルから平壌まで無人機を飛ばす遠隔技術を見ると、韓国の国防力もそれだけ発展したということだ」
また、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の総参謀部が、無人機が再び国境を侵犯して平壌に飛来した場合、即時対処できるように「完全射撃準備態勢」を取るように、歩兵連合部隊などに対して作戦予備指示を下したことについても、「韓国の国防力は(北朝鮮より)発展していることを知っているからではないか」との反応を示した。
実際、韓国の北朝鮮専門家の間では、平壌の防空担当者はすでに粛清された可能性が高いと囁かれている。
(参考記事:「泣き叫ぶ妻子に村中が…」北朝鮮で最も"残酷な夜")
平安北道の別の情報筋は、地元当局が住民に対して、戦争準備物資を調達するように指示を下したと伝えた。
しかし、それを聞いた住民は、「韓国の無人機がどうやって平壌まで飛んで来れたのか」との疑問を示し、「それが本当ならば韓国の技術が勝っているようだ」との反応を示した。