ケニー佐川が勝手に選ぶ「EICMA2019」注目モデル ベスト5!
世界最大級のモーターサイクル展示会
「EICMA2019」が今年もミラノで開催。現地に飛んだWebikeニュース編集長のケニー佐川が、会場で実際に取材した中から注目のモデルを選出し独断でランキングしてみました。
まずEICMAについて。ミラノショーの呼び名でも知られるEICMAは多くのメーカーにとって来シーズンの目玉モデルを世界に向けて発表する場になっていて、集まった報道陣を前にアンベールする、いわゆる「ワールドプレミア」のラッシュになります。会場は熱気に包まれ、胸が躍る瞬間ですね。
会場となるミラノ郊外の「Fiera Milano」はその規模が半端ではなく、「東京ビッグサイト」の実に3.5倍(34.5万m2)の広さがあり、さらに世界中から報道陣や業界のVIPが来場するため、各メーカーが展開するブースも桁違いに大きく豪華に作られています。だから取材するほうも体力勝負。メーカー毎のプレス発表会が20分刻みに組まれているのですが、それぞれ建物が異なるため会場内を走り回って取材することになるなど、正直かなり疲れます(笑)。
今年のEICMAを俯瞰してみると事前に配布されるプレスリリースなどがほとんどなく、どんなモデルが出てくるのか未知数の部分が多い年でした。また、欧州やアジアからも初めて聞くような新興ブランドの出展も少なくなく、あらためて世界は広く躍動感に満ちていると感じました。
ということで、以下のランキングは会場での注目度やインパクト、ニュースとしての新しさや話題性などから総合的に判断したものです。楽しみながらご参考にしていただければ幸いです。なお紙幅の関係で事前に発表済みのモデルについては割愛させていただきました。
第1位「HONDA CBR1000RR-R FIREBLADE/SP」
MotoGPマシンのDNA注入で最強宣言、ホンダがついに本気を出した!
今回のEICMA最大の目玉はやはりコレ! ホンダの最高峰スーパースポーツがついにフルモデルチェンジ。MotoGPチャンピオンマシン「RC213V」の最先端テクノロジーを盛り込み、サーキット性能を極める方向で開発してきた。歴代のCBRがあくまでもストリート主体としてきた自らの呪縛を解き放ったことが実は最大のトピックと言っていい。つまり、目指すは“サーキット最強”の走りだ。
新設計の水冷直4エンジンはチタンコンロッド、アルミ鍛造ピストンなどを採用し、軽量化と高回転化により最高出力218ps(160kW)/14,500rpmと一気にクラス最強レベルへと躍進。これに合わせてフレームや足まわりも強化・軽量化され、MotoGPマシンでも採用されたダクト内ウイングを取り入れるなど空力特性も進化。さらにSP仕様はブレンボ製最高峰ブレーキやオーリンズ製の電子制御式サスペンションが組み込まれるなど高次元の走りに対応。新型に際してネーミングに付く「R」が従来モデルの2つから3つになったことがホンダの本気度を物語っている。会場でもホンダブースは最大級のスペースで、EICMA開会の1日前に別会場で新型CBRのプレスカンファレンスを開催する力の入れようだった。
第2位「BIMOTA TESI H2」
名門ビモータがカワサキのスーパーチャージドパワーで復活!
話題性やインパクトの大きさで衆目の度肝を抜いたのが、カワサキとビモータのコラボによる「TESI H2」の突然の発表。カワサキが誇るH2シリーズのスーパーチャージドエンジンをビモータ製作のオリジナルの車体に搭載した混合種の誕生だ。
記者会見では3年前から密かに進んでいたプロジェクトであることが告げられ、欧州カワサキがイタリアに設立した子会社がビモータの商標を取得し、同社の出資を得て共同開発を行うに至った経緯が伝えられた。カワサキからはH2のパワーユニットと電子制御系などを提供し、ビモータが車体設計とデザインを担当。イタリアのアートと日本のテクノロジーの見事な融合に会場は割れんばかりの拍手に沸いた。
詳しいスペックは未公開だがTESIを有名にしたセンターハブステアリングを前輪に採用しているのは確かで、オーリンズ製リヤショックをスイングアーム内側に2本並列で配置するなどビモータらしい創意工夫も見事。カーボンやアルミ削り出しなど高級パーツを惜しげもなく使った美しいボディワークに目を奪われる。また、ダウンフォースを得るための巨大ウイングレットがそのパフォーマンスを暗示している。発売時期や価格も明らかにされていないが、2020年には発売予定とのこと。どんな走りの世界を見せてくれるか、今から楽しみだ。
第3位「SUZUKI V-STROM 1050/XT」
往年のパリダカマシンをオマージュし、冒険マシンとして進化
スズキの最高峰アドベンチャーツアラーが新型「V-STROM 1050/XT」としてリニューアル。「ザ・マスター・オブ・アドベンチャー」のコンセプトを掲げ、山岳路での走破性や長距離ツーリングな、冒険マシンとしてのポテンシャルがさらに高められた。
注目すべきはフロントまわりのデザイン。直線的に尖がったビーク(嘴)はかつてパリダカでも活躍したデザートレーサー「DR-Z」を彷彿させるもので、会場には実物のパリダカマシンも展示されるなど世界観をアピール。スズキもいよいよ本格的にアドベンチャー戦線へと名乗りを上げたことを印象付けた。
伝統の水冷V型2気筒1037ccエンジンは、排気量はそのままに低中速トルクと高回転でのパワーを向上し、最高出力も5kwアップ。新たに6方向3軸IMUによる最新の電子制御システム(Suzuki Intelligent Ride System)を搭載するなど電制もアップグレード。ライド・バイ・ワイヤー化によるモーショントラックブレーキシステムやSDMS、3モードのトラコンの他、坂道で有効なヒルホールドやスロープ制御システムなど、より高次元の走りにも対応。サスペンションなどの足まわりは小変更にとどまるようだが、高さ調整式のスクリーンを新たに採用し、ライポジも上体が起きたよりアドベンチャーツアラーらしい形に見直されている。
第4位「ハーレーダビッドソン PAN AMERICA」
最強の水冷Vツイン搭載、ハーレー初の冒険ツアラーが初公開!
昨年あたりから話題に上っていたハーレー初のアドベンチャーモデル「Pan America」(パン・アメリカ)がついにEICMAでアンベールされた。新設計の水冷60度Vツイン排気量1250ccの「レボリューションMax」エンジンを搭載した新世代のミドルレンジが誕生。同様に排気量975ccのストリートファイター「Bronx」(ブロンクス)とともに多くのギャラリーを集めていた。
特にパン・アメリカは従来のカテゴリー枠にとらわれない斬新でユニークなデザインが印象的で、最高出力145ps以上と既存の同クラスのアドベンチャーモデルと比べても遜色ないパフォーマンスを初っ端から実現している。
展示車両を近くからマジマジと観察してみたが、フレームはエンジンブロックを剛性メンバーとして活用する鋼管タイプで非常にコンパクトな作り。足まわりも前後サスに倒立フォークとリンク式モノショックを備え、ブレンボ製ラジアルモノブロックとミシュランANAKEE WILDが与えられるなど、オフロードを本気で走れる気合の入った仕様になっていた。一方で快適なシートや大型ハイスクリーン、フルパニアセットなどが高度なツーリング性能も有していること主張している。
その名のとおり、アメリカ全土を旅する多目的冒険ツアラーといった感じだ。デリバリー開始は2020年後半とのことなので期待したい。
第5位「BMW F900XR」
Fシリーズにニューフェイス登場、ミドルスポーツアドベンチャーの可能性
BMWは直4エンジン搭載のクロスオーバーモデル、S1000XRの新型とともに新たに並列2気筒搭載のF900XRを投入した。エンジンはF850GS用をベースに排気量を895ccに拡大し最高出力を105psにアップ。車体も新設計で剛性を最適化したスチール製ブリッジタイプのフレームに、フロントに倒立フォーク&リヤはシングルショックを備えたアルミ製両持ちスイングアームを組み合わせる。ちなみにストローク量もフロント170mm、リヤは172mmと足長スポーツツアラーとして本格的な仕様。また、世界初という軽量プラスチック溶接燃料タンクやLEDライト、コネクティッド機能のTFTディスプレイなど装備も最新化。「Rain」と「Road」の2つのライディングモードとABSとASCが標準装備され、さらにオプションとして様々な電子制御機能を追加したライディングモードProやダイナミックESAなども用意されるなど本格的だ。
軽量コンパクトな車体と軽快なハンドリングが持ち味のFシリーズと、今までは直4エンジン搭載のS1000シリーズの中では日陰の存在ながら万能性では群を抜くXRを合体させることで、「中間排気量クラスのスポーツアドベンチャー」という新たな可能性を見出した点がポイントだ。
※原文より筆者自身が加筆修正しています。