金正恩の「やりすぎ風紀指導」で高校生が死亡
北朝鮮の高校生が、韓流ドラマや映画を視聴した上、広範囲に拡散させたとの容疑で公開処刑されたと米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じているが、今度は同様の容疑で逮捕された高校生が、勾留中に死亡する事件が起きた。
首都・平壌のデイリーNK内部情報筋によると先月、市内の大城(テソン)区域の高級中学校(高校)に通う生徒4人が、「韓流取締法」とも呼ばれる反動思想文化排撃法の不純録画物視聴および保管、流布、未通報、隠蔽、同調の容疑で、反社会主義・非社会主義連合指揮部に逮捕された。
彼らは、先月16日の母の日に、ある生徒に家に集まって、酒を飲みながら南朝鮮(韓国)の歌を聞いて、踊り歌っていたが、この集まりに呼ばれず、のけ者にされたことに腹を立てた別の生徒が連合指揮部に通報した。
家宅捜索の結果、生徒の家からは韓国を含む外国の歌や映画の動画などが保存されたUSBメモリが発見され、この生徒への取り調べで、USBメモリの出どころが明らかになり、芋づる式に4人が逮捕された。
このうち1人が、勾留中に便意を催し、戒護員(看守)にトイレに連れて行ってほしいと要求したが、無視されて、その場で漏らしてしまった。それに激怒した戒護員は逆立ちするよう命じ、生徒が倒れるたびに暴行を振るった。彼は床に頭をしたたか打ち付けてしまい、気を失ってしまった。
戒護員は何の手当もせず放置したが、かなり時間が過ぎてから様子がおかしいことに気づいたのだろう。慌てて病院に運んだが、結局亡くなってしまった。
(参考記事:手錠をはめた女性の口にボロ布を詰め…金正恩「拷問部隊」の鬼畜行為)
北朝鮮では昔から、青年同盟員などで編成された糾察隊が非社会主義・反社会主義的な現象の取り締まりを行ってきた。非社会主義・反社会主義とは、北朝鮮当局が「社会主義にふさわしくない」と考えるあらゆる行為のことで、そこには服装やヘアスタイルから外国の映像コンテンツの視聴まで、様々な要素が含まれていた。
取り締まりは時に、厳しいものになることもあったが、それでもいわゆる「風紀指導」の域にとどまっていた。
それが、処刑や拷問死にまで至るようになったのは、金正恩政権になって以降だと言える。金正恩総書記は、国家の未来を担う青年層を重視するかのような言動を見せることもあるが、その実、若者に対する締め付けを強めている。
だが、まさに韓流コンテンツなどを通じて外部世界の自由を知ってしまった若者たちが近い将来、体制に反抗し、何らかの大胆な行動を起こさないとも限らないだろう。