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日銀の金融政策の正常化へのロードマップ予測

久保田博幸金融アナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

 サントリーホールディングスの新浪剛史社長は24日、ロイターとのインタビューで、日銀の金融政策に関して「緩和を続ける状況ではない」と指摘し、「日銀の次期総裁には長短金利操作解除を含めた金融緩和終了のロードマップを示してほしい」と述べた(24日付ロイター)。

 日銀の出口は遠いというのが、市場参加者を含めて大方の意見であったように思われた。しかし、昨年12月20日の日銀の政策修正をきっかけとして、正常化を進めるべきという意見が実業界などから出てきたことは心強い。

 これは政権側も同意見ではないかとみられる。そうであれば12月の修正も政権側の意向をくんだものとの見方ができなくもない。そこには日銀の総裁と副総裁人事も絡んでいた可能性も当然ある。

 昨年12月20日の政策修正、1月18日の決定会合の現状維持、その前の1月12日の読売新聞が「日本銀行は17、18日の金融政策決定会合で、大規模な金融緩和策に伴う副作用を点検する」との記事などを含めて考え合わせると、現状、日銀総裁候補の最有力は山口広秀・元日銀副総裁(日興リサーチセンター理事長)ではないかと個人的には予想している。

 その山口氏とのロイターとのインタビュー記事が昨年12月20日の政策修正の直前の19日に出ていた。インタビューそのものは16日であり、それが日銀の会合結果が出る前日に出されていた格好となる。

 この記事にも目を通していたが、自分の考える出口のロードマップとは少し異なるな程度の感想であり、修正は来年予想ということもあって、自分のなかではあまり重きをおかなかった。しかしその後、あらためて見返してみたところ、興味深いポイントがあった。

「インタビュー:日本も高インフレ継続、来年はYCC修正も=山口・元日銀副総裁」

https://jp.reuters.com/article/interview-yamaguchi-idJPKBN2T20GJ

 この記事のなかで、山口氏はインフレ予想の過度の高まりを未然に防ぐため、日銀が10年金利目標の引き上げなどイールドカーブ・コントロールの修正を検討する可能性があると述べていたのである。

 山口氏は「金融政策の修正に臨む場合には、まずはYCCを維持したまま10年金利の扱いを調整することから始まり、その上でなお経済環境が許せば金融緩和から引き締めに転換し、マイナス金利、YCCの順に撤廃するという道筋をたどる可能性があると話した」

 このように具体的な道筋を示していた。私はYCCは微調整などやらずに、オーストラリアのように一気に撤廃が望ましいと思っていた。しかし、このインタビューが行われた4日後に日銀が行ったのは、山口氏が指摘していた「YCCを維持したまま10年金利の扱いを調整」だったのである。

 たぶん債券市場参加者でも日銀関係者でも政策調整を予想していた人はほとんどいなかったのではなかろうか。そうでなければ12月20日に市場があれほどの反応を示すことはなかったのではなかろうか。

 山口氏が日銀総裁に指名されれば、上記の正常化への道筋があらためて示される可能性はある。私個人としてはできればYCC解除を優先してほしい。それを含めての正常化の可能性が事前に示されれば、市場が過度にそれを織り込むようなこともなく、市場との対話が回復してくる可能性もあると思うのだが。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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