介護する側のストレスの実態をさぐる(2020年公開版)
高齢者の増加に伴い介護問題が注目を集めている。中でも介護をする側のストレスは大変なもの。その実情を厚生労働省が2020年7月に発表した「国民生活基礎調査の概況」(※)から確認する。
まずは要介護者が同居している世帯で、介護する側がストレスや悩みを抱えているか否かについて(介護者=介護する側、要介護者=介護される側)。全体では5割台から7割台、男女別では概して女性の方がストレス保有率は高い。
「男女別では概して女性の方が、ストレス保有率は高い」のは事実だが、29歳以下ではそれが逆転している。就労状況にもよるが、介護以外にも果たさねばならないことが多く、それがストレスにつながっているのだろうか。あるいは回答者数が少ないことによるイレギュラーかもしれない。実際29歳以下の男性は全体(ストレスあり・なし・不詳合わせて)で185人のみとなっている。さらに29歳以下の女性は57人のみ。
それでは具体的に、どのような問題を悩み・ストレスの原因として介護者自身は認識しているのか。もっとも多数の人が問題視しているのは、介護している対象(要介護者)の病気や介護そのもの。男性では4割近く、女性では5割台後半の人がこの問題に頭を悩ませている。
やはりさしあたって目の前にある、介護そのものの起因となる問題が、一番のストレスの原因となる、ということだ。
気になるのは第1位の「家族の病気や介護」と比べれば回答割合は半分以下でしかないが、「自分の病気や介護」が第2位についていること。同調査別項目の結果を見ると、介護する側の73.3%が60歳以上、65歳以上で区切れば58.8%、75歳以上で区切っても30.2%の高齢者で占められている。高齢化の進行で介護する側・される側ともに年齢が上昇し、結果として自分自身の高齢・病気のような物理的・心理的な高齢問題と戦いながら介護を続け、ストレスをためてしまうようすがうかがえる。
またこの「介護者における高齢化」問題は介護者側ではだいたい男女の差異無く生じている。
男性では介護する側の1/3ほどが75歳以上で占められている。いわゆる「老々介護」という言葉がリアルな現実であることを再認識させられる値には違いない。
昨今では高齢者比率が増加する一方にある。介護問題は介護される側はもちろんのこと、介護する側にもスポットライトを当て、皆で議論と解決策の模索をしなければならない。特に介護者・要介護者双方が高齢化する傾向は顕著で、例えば双方が75歳以上同士の事例は2001年当時は(介護者・要介護者同居世帯のうち)18.7%だったのに対し、2019年では33.1%にまで跳ね上がっている。
しかもこの問題は時間の経過とともにさらに進行する類のものである。厚生労働省の介護保険事業状況報告の最新版(2018年度)によれば、2018年度時点で居宅サービスと地域密着型サービス、施設サービスを利用している人は合わせて554万人(重複含む)となっている。要介護・要支援認定者は658万人。早急な問題解決策の模索と実行が求められよう。
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※国民生活基礎調査
全国の世帯および世帯主を対象とし、各調査票の内容に適した対象を層化無作為抽出方式で選び、2019年6月6日に世帯票・健康票・介護票、同年7月11日に所得票・貯蓄票を配ることで行われたもので、本人記述により後日調査員によって回収され、集計されている(一部は密封回収)。回収の上集計が可能なデータは世帯票・健康票が21万7179世帯分、所得票・貯蓄票が2万2288世帯分、介護票が6295人分。今調査は3年おきに大規模調査、それ以外は簡易調査が行われている。今回年(2019年分)は大規模調査に該当する年であり、世帯票・所得票以外に健康票・介護票・貯蓄票の調査も実施されている。
また1995年分は阪神・淡路大震災の影響で兵庫県の分、2011年分は東日本大震災の影響で岩手県・宮城県・福島県(被災三県)の分、2012年は福島県の分、2016年は熊本地震の影響で熊本県の分はデータが取得されておらず、当然各種結果にも反映されていない。
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