日銀のマイナス金利政策を解除すべき理由
三菱UFJ銀行が日銀に預けている当座預金の一部にマイナス金利が適用されることが17日、わかった。2016年の制度導入当初を除き、大手行に適用されるのはほぼ6年ぶり(18日付日本経済新聞)。
日銀は2016年1月の金融政策決定会合でマイナス金利付き量的・質的緩和の導入を決定した。そうであれば日銀に預けている当座預金の一部にマイナス金利が適用されるのは当然ではないかと思われるかもしれないが、実はそうではない。
マイナス金利付き量的・質的緩和策については特に金融機関からの批判が強まった。それは金融機関への収益へ悪影響が懸念されたためである。
それは日銀も危惧していたとみられ、このためマイナス金利の適用はあくまで日銀当座預金の一部にだけ適用させるようにしたのである。
具体的には、日本銀行当座預金を3段階の階層構造に分割し、それぞれの階層に応じてプラス金利、ゼロ金利、マイナス金利を適用することにした。
これによって2016年の制度導入当初を除き、大手行にマイナス金利が適用されることはなかったのである。それでは何のためのマイナス金利政策だったのかということにもなるが、市場ではマイナス金利という言葉に影響を受け、円高が阻止された格好とはなった。
3段階の階層構造に分割しただけでもわかりづらいところに、2021年3月にはさらに複雑さを増すことになる。これは日銀が貸出促進のために実施している資金供給オペの残高に応じて金利を付利するという制度が付与された。これはマイナス金利の深掘りを、金融機関への影響を抑制しながら実施可能としたものとされた。
マイナス金利の深掘りは技術的にも可能であったとしても、その影響を限定的にするのであれば、いったい何のための深掘りなのかということにもなりかねない。
それはさておき、記事にあるようにマイナス金利政策であったものの、大手銀行の当座預金の一部にマイナス金利が適用されることは当初を除いてなかったのである。
しかし、超低金利環境の長期化で行き場を失ったマネーが預金に積み上がり、新型コロナウイルス禍で支給された給付金などが拍車をかけたことで、マイナス金利が適用される部分まで当座預金残高が膨れ上がったということになる。
これにより三菱UFJ銀行の収益に多大な影響をあたえることはないにしても、そもそもマイナス金利政策は何のために行っていたのかという疑問を生じさせる。
銀行が日銀に預けている当座預金にマイナス金利を適用させることで、銀行の資金運用にも影響を与えようとしたものであったが、そもそも実質的にマイナス金利が適用されていなければ効果も自ずと限られよう。
金融機関の現場担当者にも現在の日銀当座預金の利子の計算方法は複雑怪奇となっているようである。
マイナス金利政策の解除は一見、利上げに映るかもしれない。しかし、実質的にマイナス金利の適用が限られおり、このように大手行にはほとんど適用されていなかった事実もある。マイナス金利政策の解除によっての実質的な影響は極めて限られたことを示した上で、それを解除して階層構造も辞めたほうが当然、すっきりするし、今回のような金融機関への負担増も防ぐことができる。