金正恩氏の「居眠り場面」が呼び覚ます「恐怖」の記憶
北朝鮮の金正恩党委員長の「居眠り疑惑」に、韓国メディアが喜々としてツッコミを入れている。
朝鮮中央テレビは29日、この日に開催された最高人民会議(国会に相当)第13期第4回会議の録画ニュースを放送したが、その中に、ひな壇に座った正恩氏が机の上の資料をめくった後で目を閉じ、5秒ほどうつむき気味になる場面があるのだ。
人間を「ミンチ」に
これを受け、韓国メディアは早速「正恩氏 国会のひな壇で居眠り?=編集ミスで放映か」(朝鮮日報)、「正恩氏 国会で居眠り?」などのタイトルで報じた。
しかし問題の映像を確認してみると、正恩氏は確かに眠そうに見えるが、資料をめくる手は動きを止めていない。「眠気に襲われながらも耐えるのに必死」といった感じだ。
それでも、韓国メディアはお構いなしだ。理由は昨年の4月、当時の玄永哲(ヒョン・ヨンチョル)人民武力部長が会議中に「居眠り」し、さらにそれを見咎められて口答えしたために、正恩氏の命令で銃殺されたとされているためだ。
しかも、その方法は人間を「ミンチ」にしてしまうような残忍極まりないもので、世界に衝撃を与えた。
(参考記事:玄永哲氏の銃殺で使用の「高射銃」、人体が跡形もなく吹き飛び…)
側近の「激ヤセ写真」公開
この出来事の影響は大きかった。この前後にも同様の情報が相次いでいたこともあり、正恩氏のメンタルに異常なものを見る分析も出てきたほどだ。
(参考記事:「金正恩氏は感情で処刑」情報機関の心理分析)
筆者自身、まったく「普通の人」と同じような神経で、こんなことが出来るとは思わない。しかし、まだ30代前半に過ぎない正恩氏が、権力を継承してわずか数年の間に独自の独裁システムを整備してきた過程を見るにつけ、上記のような「恐怖政治」の裏にも何らかの計算があったのではないかと思える。
実際、正恩氏は部下を操る上で、必ずしも処刑だけを武器にしているわけではない。失脚させた側近を再登用しながら、「服従」こそが生きる道であると迫っているようにも見える。また、その側近の「激ヤセ写真」が公開されるものだから、「ああはなりたくない」と考える人々も多いはずだ。
(参考記事:側近「激ヤセ写真」に見る金正恩式「再教育」の恐怖)
もっとも、こんなことを計算ずくでやっているとしたら、なおさら恐ろしいとも言えるのだが。
今回の最高人民会議で独裁システムを完成させた正恩氏は果たして、処刑などの極端な人心操縦の手法を封印するのだろうか。