Yahoo!ニュース

金融緩和を粘り強く続けていくことが重要なのか

久保田博幸金融アナリスト
(写真:cap10hk/イメージマート)

 日本銀行の中川順子審議委員は、6月30日の就任後初のインタビューで、海外のインフレ高進が今後、日本の物価にも影響を及ぼす可能性に言及した。足元の消費者物価は原油価格の上昇や円安の進行などを背景に上昇圧力が強まっているとし、物価動向を注視しつつ、金融政策運営は現行の金融緩和を粘り強く続けていく考えを示した(26日付ブルームバーグ)。

 中川順子氏の前職は野村アセットマネジメント会長。証券会社の一般職から、国内有数の資産運用会社トップになった異例の経歴を持つ。その経験をもとに日銀の政策決定に新風を吹き込む存在となるか注目されている(7月2日付朝日新聞)。

 欧米の消費者物価が前年比で大きく上昇しているのに対して、日本のコア消費者物価は10月に前年比0.1%上昇にとどまっている。26日に発表された東京都の11月の消費者物価指数は前年比0.3%の上昇となっていた。

 中川氏は日本の物価動向について「ずっとゼロ%近辺という感じではなく、少し上昇圧力が強まっている」と指摘していた。たしかにその傾向が出てきたものの、そもそも消費者物価指数ではなく企業物価指数でみてみると前年比で8%もの上昇となっており、決して日本の物価が低迷しているといえるのかも疑問である。それが消費者物価には反映されていないだけではなかろうか。

 何故そうなっているのかを突き詰めるのが現在の日銀にとっては必要なことではなかろうか。その原因が仮に日銀の金融政策の及ぶ範囲を超えているものであれば、果たして「イールドカーブ・コントロールの下で、副作用にも十分配慮しながら強力な金融緩和を粘り強く続けていくことが重要」となるのであろうか。

 金融市場動向にも詳しい中川氏であり、日銀が強力な金融緩和を粘り強く続けていくことが本当に必要なのかを再確認していただきたいようにも思う。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

牛さん熊さんの本日の債券

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月20回程度(不定期)

「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、当日の債券市場を中心とした金融市場の動きを牛さんと熊さんの会話形式にてお伝えします。昼には金融に絡んだコラムも配信します。国債を中心とした債券のこと、日銀の動きなど、市場関係者のみならず、個人投資家の方、金融に関心ある一般の方からも、さらっと読めてしっかりわかるとの評判をいただいております。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

久保田博幸の最近の記事