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ジメジメした部屋で「除湿剤」が効かない理由 長引く梅雨、室内の湿気を正しく取るには?

藤原千秋ライター、住生活ジャーナリスト
除湿剤、乾燥剤(写真:アフロ)

 梅雨がなかなか明けません。湿度が高く、身の回りもジメジメして不快な日々が続いています。そんななか、ちらほら聞こえる「除湿剤が効かない」という声。

 果たして除湿剤が「効かない」のはなぜなのでしょう?どうしたら「効かせる」ことができるのでしょう?今回は、あらためて正しい「除湿剤」の使い方と、部屋の乾燥のさせ方についてご説明したいと思います。

除湿剤とは

Baka-19474さんによる写真ACからの写真
Baka-19474さんによる写真ACからの写真

 そもそも「除湿剤」とは何かというと、主に私たちの住まいの収納空間の湿気を取り除くために用いられる薬剤や商品を指します。私たちの多くがそれと認識している商品に、プラスチックの容器のなかに水が溜まっていくタイプ(タンクタイプ)がありますが、この商品の使い初めには白い粒状の固形物が入っています。

 この固形物は「塩化カルシウム」で、空気中の湿気を吸い込むと溶ける性質(潮解性)を持っています。そのため最終的にはタンクに水が溜まったように見え(実際には塩化カルシウム水溶液)、商品としての使い終わりを認識できるようになっています。

「除湿剤」は部屋においても意味がない?

 タンクタイプの除湿剤は、市場に登場してすでに30年以上にもなり、身近かつ安価でもあるため、比較的購入のしやすい商品です。ですからちょっと湿気が気になるところに使ってみるハードル自体は高くありません。しかし、

 「部屋がジメジメして不快なので除湿剤を置いているのだけど、すぐ水がいっぱいになるだけで全然部屋はカラッとしない」

 「除湿剤をいっぱい買って並べているのに全然効かない、お金がかかって仕方がない」

 「期待していたのと違う」「効かない」、このような苦情がしばしば聞かれます。

 実は、もともと「除湿剤」は、洗面所、キッチン、居間、寝室……といった「部屋置き」として使うことを想定している商品ではありません。

 「除湿剤」とは、クローゼット、押入れ、げた箱といった、扉で閉じられた収納空間(せいぜい1畳程度)の湿気対策として用いるべきものであり、そうすることで効果を実感できる商品なのです。

 空間が広く、さらに人がいるような部屋の中に置いても、外から常に入ってくる湿った空気により塩化カルシウムが溶けて水がたまっていくばかり。人体からも多量の水分が出ていますし、「部屋の湿気取り」のつもりで置いてもほとんど無意味、お金の無駄になってしまうのです。

「部屋」を除湿するには?

ミズノハルカさんによる写真ACからの写真
ミズノハルカさんによる写真ACからの写真

 とはいえ部屋のそこかしこに湿気が溜まっている体感(雰囲気や臭い)があり、ムッとした生臭さやカビ臭さなどがある場合など、どうしても部屋ごと除湿したくなりますね。それにはどうすればいいのでしょうか。

 まず、住まいに24時間換気システム(24時間稼動できる浴室換気扇など)がある場合は、梅雨時であってもスイッチを切らないようにしましょう。カビ臭さやホコリ臭さが感じられる場合、カビの胞子などが空気に濃く存在している、つまり部屋の空気自体が相当汚れている状態だと考えられます。汚れた空気を放置しないために「換気」を徹底しなければなりません。

 24時間換気システムがない場合や、早く換気効果を実感したい場合には、あわせて空気の入口と出口、2か所以上の窓を開けての自然換気も行います。ワンルームなどで窓が1か所にしかない場合などは、空気の出口をキッチンや浴室の換気扇を稼動させることで確保し(強制排気)、部屋の中に新鮮な屋外の空気をどんどん取り入れましょう。雨の日でも大雨が部屋に降り込むほどでなければ換気は必須、少なくとも日に1、2回、各10分程度は行うようにしたいところです。

 ジメジメと湿気の滞っている場の、ものの位置を変えるなどして風通しを良くすることも大切です。さらにエアサーキュレーターや扇風機など人工的に風を送る道具も併用、湿った空気を動かしていくことで一帯の乾燥を促しましょう。

 湿っている部屋にエアコンがあれば、除湿運転(弱冷房除湿か再熱除湿)によって部屋の空気中の余計な水分を屋外に排出し、乾燥した空気にして部屋に戻すこともできます。ただ気温が高い日には通常の冷房運転でもじゅうぶん部屋の空気は乾燥しますので、除湿運転にこだわらなくても大丈夫です。

 それでなくてもジメジメしているのに加えて、洗濯物の部屋干しが避けられない場面などでは、除湿機を稼働させてもいいでしょう。除湿機にはいくつかの除湿方式がありますが、夏場使用するならエアコンと同様の仕組みで水分を取り去るコンプレッサー式が無難です。

「乾燥剤」とは?

 「除湿剤」と混同されやすいものに、お菓子の袋などに入っている「乾燥剤」があります。この「乾燥剤」と「除湿剤」との違いは何なのでしょう?

 じつは「乾燥剤」も、「除湿剤」のうちに含まれます。ただ「乾燥剤」は基本的に食品や薬品、カメラレンズなどの「パッケージ」に封入されているもので、「シリカゲル(二酸化珪素)」や「生石灰(酸化カルシウム)」を主成分としています。

 ただ「除湿剤」の「塩化カルシウム」は潮解性のため本体の重さの3〜4倍もの水分を吸収しますが、「乾燥剤」の「シリカゲル」は本体の5割ほど、「生石灰」が吸い込む水分量は本体の3割ほどの重さに過ぎません。「除湿剤」よりも狭い、小さい範囲にのみ奏功する存在と言えます。

 「シリカゲル」には、「A型シリカゲル」と「B型シリカゲル」があり、A型は加熱、B型は乾燥させることでの再利用が可能です。一方「塩化カルシウム」や「生石灰」は、一度使ったら再生できません。つまりタンクタイプの除湿剤、また「塩化カルシウム」を保水剤でゼリー状に固めるようなタイプの除湿剤は、再利用できませんので注意してください。

 液体化した「塩化カルシウム」は特に危険な物質ではありませんので排水口に流せますが、アルカリ性が強いので必ず水道水を流しながら捨ててください。「生石灰」は水濡れすると発熱、膨張し、危険です。必ず水濡れに気をつけて廃棄するようにしましょう。

 「除湿剤」の使い方や部屋の換気方法を正しく知り、長引く梅雨のジメジメをうまく乗り切りましょう。

ライター、住生活ジャーナリスト

「家のなか」の事をテーマにウェブ、雑誌、新聞等で執筆。大手住宅メーカー営業職を経て2001年よりAllAboutガイド。主な著・監修書に『人生が整う 家事の習慣』(西東社)、『ズボラ主婦・フニワラさんの家事力アップでゆるゆるハッピー!!』(オレンジページ)、『この一冊ですべてがわかる! 家事のきほん新事典』(朝日新聞出版)等。2020年1月より東京中日新聞にてコラム『住箱のスミ』連載中。

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