消費量トップは中国でその57%は石炭、次いで米国・インド…各国のエネルギー政策を消費量や種類で推測
一次エネルギー利用量のトップは中国
世界各国のエネルギー政策・事情を知るため必要となる観点の一つが、エネルギーの源としてどのような一次エネルギー(石油や石炭など)を利用しているか、その動向。今回はイギリスに本拠地を構える国際石油資本BP社のエネルギー白書「Statistical Review of World Energy」を基に、状況を確認する。
「一次エネルギー」とは自然界に存在するそのままの形を用い、エネルギー源に使われているものを指す。化石燃料(石油、石炭、天然ガスなど)、ウラン、そして水力、火力、さらには太陽熱・太陽光・地熱などの再生可能エネルギーが該当する。他方「二次エネルギー」も存在するが、これには電気やガソリンなど、一次エネルギーに手を加えて得られるエネルギーなどが対象となる。今回は「一次エネルギー」を対象にしているため、「国内外を問わず、どのような自然の恵みをどれだけ用い、エネルギーを取得しているか」を知ることになる。
まずは消費量動向。単位のEJ(エクサジュール)はJ(ジュール)の10の18乗を意味する。例えば東日本大震災のマグニチュードは9.0だが、その際に放出されたエネルギー総量は2.0EJとされている。
2020年に至る動向だが、多くの国でエネルギー消費量は増加を示している。これは曲がりなりにも景況感の回復により、エネルギー消費量が増加したことを意味する。無論景気だけがエネルギー消費を左右するわけではないが、大きな要素であることには違いない。
特に中国は直近年で前年比で2.5%の増加が確認されており、新興国の伸び具合が大いに注目される状況となっている。中国は今資料の限りでは世界最大の一次エネルギー消費量を示し、さらに大きな増加の動きを止めていない(米中間の順位はすでに2009年時点で逆転している)。他方直近の2020年においては中国以外の多くの国で前年からの減少の動きが見られるが、これは言うまでもなく新型コロナウイルスの流行による経済の低迷で、エネルギー消費量が減少した結果によるもの。見方を変えればこのような状況下でも、エネルギー消費量が増加した中国の底力を見せつけられた感はある。
直近年における序列としては中国、アメリカ合衆国から大きく差をつけられる形ではあるが、インドとロシアが続き、そして日本がようやく入ってくる。
全世界では石油と石炭で6割強
続いて各国の一次エネルギー源分布。石油や天然ガスなどに区分し、どの一次エネルギーをどのくらいの割合で用いているかを示している。「再生可能」項目は太陽光や風力その他をすべてまとめたもの。「自然エネルギー」とも呼ばれる類の総計である。こちらも上記のグラフと同じく、直近年における総消費量上位10位の国のもの+αについてまとめてある。
・中国は6割近くが石炭。
・ロシアは5割強が天然ガス。
・インドは精査対象国中では中国に次いで石炭使用率が高い。
・日本は2020年時点で原子力が2%(整数四捨五入のため、厳密には2.243%)。
・イランでは石油と天然ガスでほぼすべての一次エネルギーがまかなわれている。
上位10位にはないものの特異な構成のためグラフに加えたフランスだが、同国ではエネルギー面でも独立独歩的な政策を現実のものとするため、そして電力の他国への販売を一大ビジネスとしているため、他国に関与されにくい原発を促進している。ちなみに2020年におけるフランスの総消費エネルギーのうち36%は原発起因であり、今回取り上げた諸国では最大の比率である。
中国は一次エネルギー源の6割近くが石炭。石炭は安価で経済性に優れているものの、「適切」で比較的「高い技術力」による処理をしないと、二酸化炭素の排出量など環境面での負担も大きい。中国の二酸化炭素排出量がアメリカ合衆国を超えて世界一となっているのも、石炭によるエネルギー確保がメインの構造が大きな要因と考えて問題はない。
日本の場合は石油への依存度がかなり高い。しかもそのほぼすべてを輸入に頼っている。エネルギー戦略上決して好ましい状況ではないのは言うまでもない。さらに2011年の震災を経て、エネルギー政策上多種多様なハードルが積み重なった関係で、昨今の情勢は多分にひずみが生じている。
問題点の多い石油を用いることによる火力発電がセーブされていることもあり、石油の消費量は2013年以降減少傾向にあるが、天然ガス、そして石炭は高い水準にあり、いびつなバランス関係がさらに進行しつつある。再生可能エネルギーも漸増しているものの、状況の変化に追いつかない状態である。
国民の生活を支えるエネルギーは、それぞれの国ごとに、その国が持つ事情を考慮した上で、その国にもっとも適切で、他国の動向に振り回されることのない、中長期的かつ正しい戦略の構築が必要不可欠となる。その場しのぎでない、安心して日々が過ごせる、バランスのとれたエネルギー戦略の実現を願いたいものだ。
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