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FRBは年内のテーパリング開始を模索、利上げはかなり先か

久保田博幸金融アナリスト
(写真:PantherMedia/イメージマート)

 今年の米国ワイオミング州ジャクソンホールで開催されたカンザスシティ連銀主催のシンポジウムはオンライン形式となり、1日限りの開催となった。

 注目されたパウエル議長のオンラインでの講演のタイトルは「Monetary Policy in the Time of COVID」となっていた。

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/powell20210827a.htm

 このなかでパウエル議長は、7月に開催されたFOMCのほとんどの参加者と同様に、経済がおおむね予想通り進展した場合には年内に資産購入ペースの減速を開始するのが適切となり得る、というのが私の見解であると指摘した。

 また、物価については、物価目標に向けて、一段と顕著な進展を遂げるという基準を満たしたと指摘し、労働市場についても明確な進展を遂げたと指摘した。

 つまりパウエル総裁自身も、物価や雇用情勢を確認し、年内にテーパリングを開始するのが適切との認識を持っていた、そして、「ほとんどの参加者が」ともあったように、これがほぼFRB参加者の共通認識になりつつある。

 ただし、デルタ変異株の感染もさらに拡大したとし、我々は、今後入手するデータと変化するリスクを慎重に見極めていくとも述べた。コロナ禍をまったく無視するわけではない姿勢も示した。

 そして、債券購入プログラムの縮小(テーパリング)開始が、その後近いうちに利上げが始まるというシグナルとして捉えられるべきではないとも指摘した。

 このあたりを聞いて市場参加者は安堵したのかもしれない。前回のテーパリング時もそうであったように、いったんテーパリングが始まると淡々とほぼ機械的に縮小を行い、何回かのFOMCを経て終了させる。しかし、そこからの利上げについてはかなり時間を掛けて行うこととなりそうである。

 前回、テーパリングは2013年12月のFOMCで決定、その後8回のFOMCを経て2014年10月にテーパリングは終了。その後、利上げ(正常化)を決定したのは、2015年12月のFOMCにおいてであった。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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