昨年は倍返し、今年はSTAP細胞
市場関係者にとって2013年のキーワードは「アベノミクス」であろう。しかし、2013年の流行語大賞には選ばれなかった。2013年の大賞は4つあった。
安倍首相がデフレ対策を行うには「今でしょう」とばかり、リフレ政策を全面に推して、それを実行したのが黒田日銀となった。
昨年4月の異次元緩和では、コアCPIの2%という物価目標に対して、2年程度の期間を念頭に置いて、早期に実現するため、マネタリーベースおよび長期国債・ETFの保有額を2年間で2倍程度とし、長期国債の平均残存年数を現行の2倍以上にするという、まさに「倍返し」の政策を日銀は打ち出した。
この日銀の異次元緩和を柱とするアベノミクスは、急激な円安をもたらし、それが株高へと繋がり、日本にとってまさに「お・も・て・な・し」となった。
ただし、日銀の大胆な国債買入は、国債市場の流動性を後退させ、国債相場は不安定となり、債券市場関係者にとっては、「じぇじぇじぇ」という事態が発生した。
2014年も1か月とちょっとが過ぎた。すでに今年の流行語大賞の有力候補になりそうなものも現れた。小保方晴子博士が発見した「STAP細胞」である。「STAP細胞」は固定観念を疑うことから発見に繋がったと言えるのではなかろうか。そんなことはありえない、「数世紀に及ぶ生物細胞学の歴史を愚弄するものである」とまで評されたものが、実はありえた。このあたり、市場でのテールリスクに似たようなところもある。市場でもありえないと思っていたことがありえた。リーマン・ショックのあとに欧州の信用危機が訪れると誰が予想できたであろうか。
今年はまだ11か月近くある。ソチ・オリンピックはまもなく開催され、あらたなドラマが生まれるかもしれない。2020年の東京オリンピックのことを意識しながら、開会式などをみることになろう。今年はサッカー・ワールドカップもブラジルで開催される。こちらも注目度が高い。このあたりから流行語大賞の候補が出るかもしれない。
しかし、流行語大賞になるような言葉は、「STAP細胞」のように予想もしなかったところから現れる。それを予測することは難しいが、今年に入り株式市場などは大荒れとなっている。これが何かしらの前触れであるかもしれない。アベノミクスとは何であったのか。何の努力もなしに、日銀が国債を大量に買い入れるだけでデフレを脱却させるという、まさに錬金術のようなものが本当に可能なのか。
ある有名なアニメ「鋼の錬金術師」の台詞に、「人は何かの犠牲なしに何も得ることはできない。何かを得るためには、それと同等の代価が必要になる。それが、錬金術における等価交換の原則だ」というものがある。その犠牲とは何であるのか。異次元緩和という錬金術に対する等価交換が今年のキーワードとなる可能性もあるのではなかろうか。そもそも錬金術などなかったという結果となるのかもしれないが。