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23卒以降の就職活動はこうなっていく!〜中長期的には「学生側が会社を選ぶ場」に近づいていく〜

曽和利光人事コンサルティング会社 株式会社人材研究所 代表取締役社長
安心してください。「中長期的」には若者は希少人材で大事にされるはずです!(写真:アフロ)

■コロナでもそれほど厳しい就活にはならなかった

2023年卒の就職活動の準備が、そろそろ始まる時期となりました。コロナ禍で21年卒、22年卒の就活は「かなり厳しくなる」と言われながら、学生側から見ると、それほど難しくならなかったのが実態と言っていいと思います。

その一方で、いま学生側に求められる「就活の質」が変わりつつあります。それはどのような背景による、どのような変化なのでしょうか。今後の就職活動の中長期的な見通しも含めて整理してみましょう。

■「若い人材」の希少価値が高まっていく

就活の質が変わる最大の要因は、労働力人口の減少です。

日本の労働力人口(労働の意思と能力を持った15歳以上の人口)は、1990年代をピークに一時減少していましたが、「働き方改革」などで働く人の比率が高まったことにより、2013年から7年連続で増加し、過去最高の6900万人台に達しました。

ところが、最新の調査によると、この労働力人口が2020年に減少に転じています。労働参加率(労働力人口÷生産年齢人口〔15歳以上65歳未満の人口〕)はすでに90%を超えているため、日本は当分の間、労働力が減少して人手不足が続く可能性が高いといえます。

このことで就活生の立場が強くなり、多くの会社や仕事の中から行きたいところを選べる可能性が高まります。景気の悪化などの影響で一時的に求人が減ることはあるでしょうが、長期的にみれば若い人材が会社にとって希少価値を持つ存在となるのは明らかです。

ということは、これまで「応募してきた学生を会社側が選んでいた場」であった就職活動は、今後は「学生側が会社を選ぶ場」に近づいていくことになります。

■「自己分析」の重要性は相対的に下がる

こうなると、就職活動で重要なことも変わっていきます。これまでの「自己アピールや志望動機を伝える力」から「自分に合った会社をきちんと選ぶ力」に変わっていくのです。

これまでの就職活動で最重要視されていたのは「自己分析」でした。面接やエントリーシートを突破するため、自己アピールや志望動機を洗練する必要があったからです。就活の準備は、自分の性格や能力や価値観を整理し、言葉で相手に伝える練習が中心でした。

自己分析も一定の難しさはありますが、そうは言っても自分のことです。記憶をたどったり、知人からフィードバックをもらったりすれば、最終的には「自分はこんな人です」と整理することはまだ簡単でした。

ところが、人手不足の時代においては、「自分を求める会社を知って選ぶ力」が重要になります。1社しか合格しなければ、選ぶ必要はありませんが、複数社合格が一般的になれば、そこから最も自分に適した1社を選ばねばならないからです。

しかし、会社は、事業、仕事、お金、技術、組織、文化、人など、様々なものからなる複雑なものです。情報は簡単には手に入りませんし、自分に合うのかどうかの判断も容易ではありません。経営学を学び、会社を分析する力をすべての就活生が身につけるのも現実的ではありません。

■会社をよく知っているオトナの力を借りる

では、どうすればうまく会社を選べるでしょうか。そのひとつの方法は、すでに会社というものをよく知っているオトナの力を借りることです。

学校のOB・OGやキャリアセンターの相談員、親や兄弟、親戚など、自分をよく知るオトナたちに、どんどん相談をして、正確な情報を入手し、自分に合っているかどうかの判断をサポートしてもらう必要性がどんどん増していくのです。

新卒での就職活動は、人生で一度きりです。就活生は全員「就活の素人」であると言ってよいでしょう。

一方で、長年就活生を探して選んできた「採用のプロ」は多く、彼らに自分を探し出してもらうことの方が、これからの時代においては効果的かもしれません。彼らに発見してもらうためには、見つけやすい場所に自分をさらけ出すことが大切です。

■情報を発信し「採用のプロ」に見つけてもらう

「採用のプロ」に見つけてもらう方法のひとつは、OB・OG訪問です。就活のネット化で減っているものの、近年はアグレッシブな採用活動として「リファラル採用」(社員や内定者の紹介による採用)に取り組む会社が増えています。

OB・OG訪問をすれば、その人が会社や人事に紹介・推薦してくれるかもしれませんし、直接OB・OGがいなくても、SNS全盛の世では、志望業界の社会人を見つけることは難しくないはずです。

また、学生が自分の情報を詳細に登録しておくと、会社が情報を検索してメールを送ってくれる「スカウトメディア」もあります。就職ナビのスカウト機能を利用してもいいでしょう。

後は「採用のプロ」たちが、自分を探し出してアプローチするのを待つだけです。スカウトが来たら吟味して、受けるかどうかを検討すればよいのです。就活生自身では発見できなかった自分に合う会社が見つかるかもしれませんよ。

キャリコネニュースにて人と組織のマネジメントに関する連載をしています。こちらも是非ご覧ください。

人事コンサルティング会社 株式会社人材研究所 代表取締役社長

愛知県豊田市生まれ、関西育ち。灘高等学校、京都大学教育学部教育心理学科。在学中は関西の大手進学塾にて数学講師。卒業後、リクルート、ライフネット生命などで採用や人事の責任者を務める。その後、人事コンサルティング会社人材研究所を設立。日系大手企業から外資系企業、メガベンチャー、老舗企業、中小・スタートアップ、官公庁等、多くの組織に向けて人事や採用についてのコンサルティングや研修、講演、執筆活動を行っている。著書に「人事と採用のセオリー」「人と組織のマネジメントバイアス」「できる人事とダメ人事の習慣」「コミュ障のための面接マニュアル」「悪人の作った会社はなぜ伸びるのか?」他。

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