新入社員の「この企業で定年まで勤めたい」率は約1/3、1年経過すると…
日本の終身雇用制度的慣習も薄れつつあるが、多くの就業者は自ら門戸を叩いた企業に長年勤めたいと考えている。一方、就業してから企業の実態を知るに及び、長期間の就業は難しい、転職や転業を考えたいとする人も多い。今回はソニー生命保険が2016年4月に公開した、新社会人に対する意識調査(2016年3月27日から31日にかけて今春就職した、あるいは就職してから1年が経過した社会人に対してインターネット経由で実施。有効回答数は1000件。男女比、就業年数別で均等割り当て)の結果を基に、新社会人と、就業してから1年が経過した準新社会人における、就業企業への就業希望年数を確認していくことにする
今調査対象母集団のうち社会人1年生に、最初に就職した会社でどれくらいの期間働きたいかを聞いた結果が次のグラフ。意外にも定年まで・定年後も働きたいとする人は1/3強に留まっていた。
「定年まで」以外では「2~3年位」を中心に多分に同意意見が集まり、2年から10年位の間に4割強が収まっている。回答者はその多勢が20代前半なので(社会人1年生が対象。調査対象は20代なので、中には20代後半以降の人も居る可能性は否定できないが少数には違いない)、定年退職までの期間が間近にひかえているので継続就業希望期間が短くなるとの話でもない。企業に対する忠誠心、就業し続けたい想いはさほど強くは無いようだ。さらに入社直前・直後(質問は3月中旬)の時点で、すでに5.6%の人が「既に辞めたいと考えている」と答えている。何か色々と複雑な事情があるのだろう。
ところが就業してから1年が経過した、社会人2年生となると、大きく心境は変化する。
「定年(後)まで働きたい」とする意見が約2割にまで減少する。そして「すでに辞めたいと考えている」との意見が21.4%と大きく上昇、「2~3年位」との意見も増え、辞めたい意向の増加だけでなく、辞めたい時期が前倒しとなる。最初の「1年生」と同一人物による回答では無いので誤差が生じている可能性はあるが、報告書の解説にある文言「実際に1年間働いてみると、疑問や悩みが生じ、転職を考えるようになる人がいるのかもしれません」の通り、まさに1年間の就業の中で、転職(少なくとも現在勤めている企業からの離職)の想いをより強く抱かせる事柄が少なからず生じたのだろう。とりわけ、どこまで本気なのか否かはともかく、1年の就業で「この会社は今すぐにでも辞めたい」と考えている人が5人に1人以上はいる実態に、驚く人もいるに違いない。
ちなみに上記2つのグラフの値を比較することで、1年の就業期間に生じた継続就業意欲の変化を推し量ることができる。
「既に辞めたい」とする意見が大幅に増加し、それとほぼ同率のマイナスへの振れ幅が「定年まで」に生じている。年単位での就業希望者の回答率変化は誤差程度でほとんど変化無し。「定年まで」回答者が1年間で丸ごと「既に辞めたい」にシフトしたのではなく、ところてん式に就業希望の年数が短縮化したものと考えられる。
他方、今調査はほぼ同じ条件で1年前、2年前にも実施されており、それと比較すると注目すべき動きも見られる。「定年まで働きたい」と「定年後も働きたい」を足した、つまり会社への高い傾注心の度合いを推し量れる値を算出したものだが、社会人1年生・2年生共に、一部イレギュラーが生じているものの、大体前年よりも高い値が出る傾向が生じている。
経年調査はまだ3年分のみなので単なる数理的なぶれの可能性もあるが、注目すべき動きには違いない。
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