日銀は日本国債の機能を回復させるどころか、国債の流動性を枯渇させかねない事態に
どうして日銀は12月20日に長期金利の変動幅を拡大したのか。その本当の理由はまだ明らかとはなっていいない。黒田日銀総裁はこれは正常化への一歩ということでは全くない」と強調した。あくまで、金融緩和のなかで、債券市場の機能回復のために行ったものとの位置付けであった。
ただし一度、拡大させてしまった長期金利の変動幅をここでストップというわけにはいかなくなる。これまで変動幅の引き上げも利上げとして断固拒否していた日銀こそ、これが何をもたらすのかも感じ取っていたはずである。これがダムの崩壊を招きかねないものであったためである。
日銀の長期金利コントロールがなかった場合に、現在の日本の長期金利を取り巻く環境から適正な水準を導き出すのはなかなか容易ではない。ただし、それは0.25%や0.50%で収まるものではないことはたしかである。
日本の国債利回りはファンダメンタルズと呼ばれる景気や物価動向、そして国債の需給、さらには米国債や欧州の国債利回り変化に影響を受ける。その背景となる欧米の中央銀行の金融政策の影響も受ける。
日本の消費者物価指数が4%近くとなり、米長期金利が3.85%となるなどしていることから、少なくとも日本の長期金利は1%を超える水準にあってもおかしくはない。それを力ずくで抑えることにはかなりの無理が生じる。
欧米の中央銀行の利上げペースはブレーキが掛かったが、利上げはまだ継続すると予想され、それは結果として欧米の長期金利に反映される。ドイツの10年債利回りは2.5%と2011年以来の水準にここにきて上昇してきている。
大幅な利上げによる景気へ影響も懸念されるが、政策金利そのものが引き上げられることで、米国の10年債利回りが再び4%台に乗せてきてもおかしくはない。
今回の日銀の政策修正は、日銀とすれば正常化への一歩ということでは全くないとの認識であったかもしれないが、それは結果として正常化への一歩にならざるを得なくなる。この動きは余程の状況変化がないと止めることはできないであろう。
日銀は長期金利の変動幅を拡大するとともに、国債の買入を増加、そしてあろうことか2年債、5年債、20年債、30年債、40年債のカレントの指し値オペを導入した。これは日銀が会議室で決めたイールドカーブで止めますよということであろう。
29日にも日本の国債には売り圧力が掛かった。これに対して日銀は中期ゾーンの指し値オペや臨時オペで対応してきた。その結果、日本国債は日銀によって吸い上げられた。これによって日本国債の流動性が枯渇しかねず、動きを増幅させかねないものとなる。つまり日本国債を中心とした日本の債券市場の機能をさらに低下させかねないことを日銀は行っていることになる。