金正恩氏と北朝鮮の「航空機事情」…かつては空軍を海外派兵
北朝鮮の金正恩党委員長は10日午後2時36分(日本時間3時36分)、米朝首脳会談に出席するため、中国国際航空(エアチャイナ)のCA122便でシンガポールに到着した。現地紙ストレーツ・タイムズが伝えた。
CA122便には、習近平氏ら中国要人が使用する専用機が用いられた。同日午前、平壌からは同便と金正恩氏の専用機「チャンメ1」号、輸送機の計3機がシンガポールに向け出発していた。
飛行中の航空機の位置をリアルタイムで表示するウェブサイト「フライトレーダー24」によると、エアチャイナのCA122便はこの日午前7時20分(日本時間)に中国から平壌に到着。8時39分(同)に平壌を出発した。この時点で、同機には金正恩氏が搭乗していると見られていた。同氏の専用機「チャンメ1」号は1980年代に旧ソ連から導入されたもので、老朽化のため、シンガポールまでの長距離が不安視されていたためだ。
それでも、金正恩氏は国内の移動で同機を頻繁に使用している。あまりに頻繁なため、広いとは言えない北朝鮮国内で、「こんなに飛行機に乗る必要があるのか?」との声も出ていたくらいだ。海外へ行く際にも絶対に乗ろうとしなかった父・金正日総書記とは対照的だ。
もともと金正恩氏は、戦闘機などの「メカ好き」として知られる。乏しい航空燃料を大量に消費し、空軍の戦闘訓練などを直接指導してきたのもそのためだろう。
(参考記事:金正恩氏「空軍戦闘飛行術競技大会」を指導…労働新聞、写真を多数掲載)
北朝鮮空軍はかつて海外の戦場に派兵され、ベトナム戦争では世界最強の米空軍と、第4次中東戦争では中東最強のイスラエル空軍とドッグファイトを繰り広げ、少なくない戦果を挙げた。
(参考記事:米軍機26機を撃墜した「北の戦闘機乗りたち」)
しかし、現在では航空機の老朽化や整備不足、パイロットの訓練不足で見る影もないほど弱体化した。金正恩氏は空軍司令官出身の李炳哲(リ・ビョンチョル)朝鮮労働党軍需工業部の第1副部長に取り立てるなどしているが、空軍の立て直しは困難だろう。
(参考記事:第4次中東戦争が勃発、北朝鮮空軍とイスラエルF4戦闘機の死闘)
ちなみに李氏は、北朝鮮の弾道ミサイル開発で中心的な役割を果たした「ミサイル4人組」のひとりに数えられている。ミサイルもまた、金正恩氏の「危険なオモチャ」であるということか。