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【新見市】幻の和牛「竹の谷蔓牛」 地元の宝を活用して地域を活性化

りょーちんWebライター(新見市・高梁市)

新見市には多くの特産品があり、代表的なものには千屋牛やピオーネなどがあります。


多くの人が新見と聞いてイメージする有名な特産品の他に、新見市には「竹の谷蔓牛」という和牛があります。


私自身も今回の取材をするまで、竹の谷蔓牛について聞いたことがある程度でした。


しかし今、地元の未来を担う可能性が高い竹の谷蔓牛を巡る動きが活発化しています。



新事業スタート

令和6年6月、日本最古の蔓(つる)の一つとされ、和牛のルーツとも言われている竹の谷蔓牛の維持確保を目的とした「令和6年度多様性確保に資す黒毛和種母系維持確保事業」が、竹の谷蔓牛の増頭及び認知を広げることを目的とした竹の谷蔓牛活用推進協議会(新見市)によってスタートしました。

*蔓(つる):選択淘汰を行いながら、近親交配により優良形質の強化、固定を行い、同じ特性を遺伝する系統のこと


本事業は、日本の畜産業の発展に寄与すると期待される事業に助成金を交付する、日本中央競馬会特別振興資金助成事業として採択されました。


本事業が日本中央競馬会の助成事業に採択されたのは、竹の谷蔓牛の発展が日本経済に与える影響が大きいと判断されたことを表しています。


限られた事業だけが採択される助成事業に、新見市の事業が採択されたことは非常に意義があり、これからの展開が楽しみです。


(第1回推進委員会の様子) 画像提供:竹の谷蔓牛活用推進協議会
(第1回推進委員会の様子) 画像提供:竹の谷蔓牛活用推進協議会



事業の目的と背景

1830年頃、役牛(えきぎゅう)として育種され現在まで多くの人の力によって守り続けられてきた竹の谷蔓牛ですが、役牛から肉用牛へと和牛の役割が変化する中で、今後どのように希少な系統を維持確保していくかという大きな課題に直面しています。


系統を維持するために牛の頭数を確保する仕組み作りや、若い後継者が生業とできる地場産業の確立などが当面の課題です。


これらの課題を解決するために始まったのが、本事業であり、竹の谷蔓牛をモデルに希少系統を維持確保できる肉用牛生産基盤の体制構築を実証し、和牛の多様性を確保することを最大の目的としています。



経済性を獲得し、希少性を守る

事業の内容は大きく4つに分けられます。


①母系統を維持するための種雄牛の維持確保

希少系統の母系統を維持するための種雄牛の確保・精液生産を行う事業

*種雄牛:子牛を生産するための人工授精用精液の供給に利用される牛


②特徴を有する繁殖牛の維持

希少系統を普及するため、受精卵移植技術の最大限の活用を図るとともに、希少系統の全国普及による散逸や海外流出を防ぐため、データの集積と厳密な系統管理のシステムを作成する事業

*繁殖牛:肉用牛や乳用牛の子牛を産ませるために飼養される雌牛


③多様性維持の重要性啓発

 聞き(口述)書き(紙)の記録と配布を行うとともに、安全かつ伝統的な管理技術の伝承記録と配布を行う事業


④経済性と希少性の総合評価

 市場ニーズの調査及び利活用推進方法の検討を行うとともに、地域風土や歴史等の調査を行う事業


竹の谷蔓牛を維持確保するためのモデルを確立することで頭数が増加し、希少な和牛肉を市場に流通させることが可能になります。


英知を集め竹の谷蔓牛を上手にブランディングし、市場に出すことで経済効果が期待でき、それによって希少性を守っていくことにつながります。


私も竹の谷蔓牛の肉は食べたことがないため、どのような味がするのかぜひ食べてみたいです。



新たな市場の開拓

令和6年9月現在、種雄牛を選抜する段階まで完了しており、随時精液の採取を行っていく予定です。


繁殖牛からの受精卵の採取も行っていますが、母牛自体が少ないことや気候の問題などがあり、試行錯誤を続けています。


市場ニーズについては、2024年9月13日に東京で開催された第一回利活用推進検討調査会で議論が行われました。大学や専門家と連携することで研究を進めていき、飲食店や精肉店への出荷につなげていきます。


まずは東京を中心とした都市部から流通させていき、段階的に拡大していく予定です。


私も、新見市内で竹の谷蔓牛を食べられるようになることを心待ちにしています。



新見発信で全国の中山間地域に活気を

協議会幹事長の井石和美氏は今回の事業で成し遂げたいことについて、「経済循環のモデルケースを確立することで、新見と同じような地方の中山間地域が活性化していくためのきっかけができたら良いと思っている」と力を込めます。


本事業の成功と竹の谷蔓牛の発展には、市民の力が欠かせません。竹の谷蔓牛の特徴や歴史について多くの人に知ってもらうことが非常に大切です。


2024年12月12日にはシンポジウムの開催が予定されている他、今後も竹の谷蔓牛関連のイベントなども開催される予定です。


地元の市民が竹の谷蔓牛について知り、周りの人に伝えていくことが非常に大切ではないかと思います。


竹の谷蔓牛の絵本が出版されています。(絵本URL )



筆者自身も新見市出身であるため、本事業によって竹の谷蔓牛の認知が広がり、一人でも多くの人が新見市に興味を持ち足を運んでくれることを期待しています。


【竹の谷蔓牛活用推進協議会】

住所:〒718-8585 岡山県新見市西方1263-2 公立学法人新見公立大学 地域共生推進センター内

TEL:090-2294-9175(幹事長 井石和美 氏)

URL:竹の谷蔓牛活用推進協議会HP





Webライター(新見市・高梁市)

取材・インタビューライティングを得意とするWebライター✒️ 主な活動:Yahooニュースエキスパートパート 地域クリエイター(新見市・高梁市担当)、岡山経済新聞記者/趣味:温泉♨️サッカー観戦⚽️

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