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百年に一度ではなく、約十年に一度ずつ起きていた経済危機

久保田博幸金融アナリスト
(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 百年に一度と称されるものがある。たとえば異常気象。これは百年どころか毎年のように起きている。そして、経済でも同様に百年に一度の危機という言葉が使われることがある。

 しかし、異常気象ほどではないものの、大きな経済危機は百年に一度というより、日本では十年に一度の割合で起きていた。

 日本の高度成長は1970年あたりまで続いた。1964年の東京オリンピック、1970年の大阪万国博覧会なども象徴的なイベントであったと思う。

 1971年にはニクソン・ショックが起き、1973年には第一次石油ショックが発生した。低成長期に入ったが、株価は上昇を続け、1989年末につけた日経平均の38915円が最高値となった。そして、1990年台のバブル崩壊を迎える。

 この1990年のバブル崩壊が日本経済を根底から揺るがすことになる。いわゆる金融経済危機といえた。そして、年功序列・終身雇用、金融機関の護送船団方式といったそれまで日本経済を支えていた仕組みも崩れてきたのである。

 2000年台には米国でITバブルの崩壊が起き、これはハイテク製品に大きく絡んでいた日本経済にも大きな影響を与えた。ハイテク企業を巡る様相がこれをきっかけに変わってきた。このITバブルの崩壊も経済のデジタル化が促進していたことによる出来事でもあったといえる。

 2010年近辺には金融システムを揺るがす出来事と国の債務リスクが意識される出来事が続けておきた。リーマンショックに代表される金融危機は金融機関におけるバブルの崩壊ともいえた。ギリシャショックを発端とした欧州の信用危機については、ユーロというシステムの存在そのものも問われたが何とか危機は回避した。日本への直接的な影響はそれほど大きくはなかったといえども日銀などは危機対応を迫られることになった。

 そして、2020年の新型コロナウイルスの感染拡大があらたな危機を招くことになった。ロックダウンにより、経済活動にブレーキが掛かり、歴史的な景気の悪化を招いた。

 過去の10年ごとの危機は、何らかのバブルが崩壊したことが要因となっていた。しかし、今回のコロナ危機についてはバブルの崩壊ではなく、ウイルスが直接的な原因であった。過去の事例をみてもパンデミックはいずれ静まる。百年前のスペイン風邪による日本経済への影響は一時的であったとの見方もできる。これに対して、コロナによる経済への影響はかなり大きく、生活様式も大きく変わるとの見方もある。いずれにしても今回のコロナ危機も十年に一度の危機として歴史に刻まれるであろうとは確かであろう。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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