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2024-2025年の「保活」を占う

普光院亜紀保育園を考える親の会アドバイザー/ジャーナリスト
保育園の入園事情は変化しているが…(写真:イメージマート)

2024年4月入園の入園選考の結果が通知される季節になりました。そこで、2024年の年度途中あるいは2025年4月に保育園入園を考えている方のために、今年の保活を占ってみましょう。

「待機児童数ゼロ」を信じてはいけない

国が発表した2023年4月入園での全国の「待機児童数」は、2680人。「100都市保育力充実度チェック」で保育園を考える親の会が調査する政令市や首都圏の100の市区の合計でも「待機児童数」は、わずかに640人でした。しかし、保育園を考える親の会が独自に算出した「認可の利用申請して認可を利用できていない児童数」の100市区合計は40,115人に上ります(ここで言う「認可」とは、認可保育園、認定こども園、小規模保育、家庭的保育など)。

「待機児童数ゼロ」が政治目標となったために、国の定義により「待機児童数」のディスカウントが行われるようになっていることは、これまでの記事でも解説してきましたが、ディスカウント率は高くなる一方です(次図参照)。

少子化の進行により入園申請そのものが減少傾向にある自治体が多く、認可保育園等の入園状況は10年前と比べて格段に改善しているのは事実です。しかし、居住自治体が「待機児童数ゼロ」だから必ず入れると思っていると、痛い目に遭うことがあるので注意が必要です。特に、次のような現象があることを知っておいたほうがよいでしょう。

1歳児クラスは混んでいる?

前掲の「100都市保育力充実度チェック」では、「入園決定率」という数字を独自に調べています。これは、4月入園を希望して申請した子どものうち、実際に入園できた子どもが何%いたかという率で、受験で言う合格率のようなものです。

100市区の平均「入園決定率」は次図のように推移しており、2023年は若干低下していました。

詳しく見ると、100市区の半数を超える自治体で2023年4月の「入園決定率」は2022年4月よりも低くなっていました。

0歳児クラスの空きが増えているという報道もある中、何が起こっているのでしょうか。

明確なデータがあるわけではありませんが、育休延長制度の利用が増えた結果、入園希望が1歳児クラスに集中している可能性があります。

たとえば、9月生まれの子どもの場合、生後6カ月で最初の4月を迎えます。従来であれば、最も入りやすい4月入園を逃さないように、ここで0歳児クラスに入園・職場復帰する人が多かったはずです。しかし今、育休延長をして次の4月に1歳クラスへの入園・復帰するという選択肢を選ぶ人が増えているのです。

ただし、1歳児クラスの入園が厳しい園や地域の場合、それでよいのかどうかは希望園の状況を見て検討したほうがよいかもしれません(育休延長については後述で詳しく)。

再就職希望者等も入園できる?

こういった状況で希望が出てきたのが、再就職希望(求職中で申請)やパートタイマーの家庭です。これまでは、入園選考での優先順位が低く、激戦地での入園は望み薄でした。しかし今は、これらの家庭も時期を工夫すれば入園が可能です。

実際の可能性を見るためには、自治体が公開している空き状況情報が役立ちます。「入園はもっと先に」と考えている人も、今すぐ「○○市 保育園 空き状況」で検索してみてください。年度後半は0歳児クラスも埋まっている園が多いのですが、4月以降しばらくは0歳児クラスの定員が埋まらない園も増えています。空きがあるということは、優先順位が最下位でも入園できるということです。

空き状況情報でタイミングを図る

特に首都圏自治体では、4月入園で1歳児クラスは埋まるものの、0歳児クラスは夏ごろまで空きがあるという園が多くなっています。自治体や園によって事情は異なりますが、0歳児クラスを年度前半に希望すれば、入園できる可能性が高いということです。

毎月の空き状況をチェックすると、その園の0歳児クラスが何月ごろに埋まるのかという例年の傾向もわかります。過去のデータがサイトにない自治体もありますが、窓口で聞けば情報を提供してくれる場合もあるでしょう。

この空き状況をいろいろと見てみると、人気園の1歳児クラスでも年度途中に欠員が出て数カ月埋まらないこともあることがわかります。もしも、何としてもこの園に入りたいという園があるのなら、入園申請を継続して待っていればチャンスが巡ってくるかもしれません。

なお、大阪市など近畿地方には、いまだに、年度前半でも0−1歳児の空きがほとんどないという激混み状態の自治体が目立ちました。

育休延長をどう考えたらいいか

育休延長希望者の増加が、保活事情を変化させています。

育児休業延長制度とは、認可保育園・認定こども園・小規模保育等に入園できなかった場合、1歳を超えても最大2歳になる前日まで育休を延長できるというものです。

本来の法定の育児休業期間は1歳の誕生日の前日までですが、認可保育園・認定こども園等に入園できなかったという証明(不承諾通知、保留通知など自治体により呼称は異なる)を提出すれば、まず1歳半前日まで、1歳半で再び入れなかった場合には2歳前日まで延長でき、育児休業給付金も受け取ることができます。育児休業給付金の額は、取得期間180日まで賃金の67%、それを超えると50%になります。

なお、不承諾通知がなくても勤務先が認めれば育児休業の延長は可能ですが、給付金は給付されません。

育休延長制度の利用を考えている人は、次のことに注意する必要があります。

① 1歳の誕生日がある月の認可保育園等の入園申請をすること。その入園選考で不承諾となれば、給付金付きで育休延長が可能になる。1歳半の時点も同じ。4月入園は前年の11月ごろに入園申請の受付があることに注意。2月入園、3月入園は入園申請ができなかったり前倒しになっている場合があるので、子どもが早生まれである場合はあらかじめ自治体に相談してみたほうがよい。

② 自治体としては入園申請を受理すれば入園選考にかけざるをえないので、人気園を1園のみ希望したとしても、空きがあれば入園内定してしまうことがある。その場合、入園を辞退すると不承諾通知をもらえないことは覚悟しておくこと。

③ 入園申請書に入園選考での落選を希望するチェック欄を設けている自治体が多いので確認すること。「優先順位が下がってもよい」などの表現になっている場合もある。

④ 延長期間が満了するまでに復職できるよう入園時期を予定する。1歳児クラスの年度途中は入園が難しい場合が多いので注意すること。

園選びがいっそう重要に

これらの状況から、保育園をある程度選べるようになってきたことがわかります。いったん入園すれば長いお付き合いをすることになるので、園見学をしてじっくり選んだほうがよいでしょう。

全体に空きが出やすい状態になっていますので、希望の園に絞り込んで入園申請をして待つのもよいでしょう。気に入った園に空きが出たら、入れるときに入ってしまうのがよいと思います。「まだ育休延長できるから」「給付金が出るから」と先送りにして、希望園に入れなくなるのは残念です。保育園のある生活は、考えている以上に子育てや子どもを支えてもらえるものです。

園選びについては、保育園を考える親の会のサイトでも園見学のポイントを挙げているので参考にしてください。拙著「後悔しない保育園・こども園の選び方」も参考になります。

園は、子どもが毎日10時間前後過ごす環境になります。乳幼児期の子どもは、安心できる環境で大人に優しく関わってもらうこと、思いっきり好きな遊びができることで発達がより促されることが明らかになっています。保育園を単なる預け先と考えて便利さや見栄えの良さを重視するのではなく、保育者が子どもに接する様子や遊びの環境に着目して園選びをすることをお勧めします。

保育園を考える親の会アドバイザー/ジャーナリスト

保育制度、保育の質の問題に詳しい。保育園を考える親の会アドバイザーとして、働く親同士の交流・情報交換の場を支え、保育に関する相談にも応じながら、ジャーナリストとして保育や両立に関する執筆・講演活動を行っている。大学講師(児童福祉・子育て支援)、国・自治体の委員会委員も務める。最新刊は「不適切保育はなぜ起こるのか」(岩波新書)。ほかに、『共働き子育て入門』(集英社)、『変わる保育園』(岩波書店)、『保育園のちから』(PHP研究所)、『共働きを成功させる5つの鉄則』(集英社)、『保育園は誰のもの』(岩波書店)、『後悔しない保育園・こども園の選び方』(ひとなる書房)など多数。

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