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今年は中国人が「日本のお花見」に強い関心を示さない?その中国ならではの理由

中島恵ジャーナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

今年はリアクションがイマイチ?

今年の桜はまず3月17日に福岡県で開花し、27日には東京でも満開となった。今後、西日本・東日本の各地で本格的にお花見シーズンを迎える。

東京では今週末にかけ、上野公園や新宿御苑、目黒川沿いなど桜の名所に大勢の人が繰り出すことが予想され、フェイスブックやインスタグラムなどのSNSにも桜の写真を投稿している人が多い。

日本で最も多い外国人である在日中国人も同様だ。

彼らも中国でよく使われているSNS、ウィーチャット(微信)に桜の写真を投稿し、中国の友人たちに日本の桜の写真をシェアしている。

だが、複数の在日中国人の友人に聞いてみると「今年はどうも中国側からのリアクションが少ない気がする」という。

例年ならば「やはり日本の桜は本当に美しい!」と飛びつき、多数の「いいね」がもらえるのだが、今年は今のところ「それほどでもない……」。たずねてみると、いくつかの理由があるようだ。

中国でもオミクロン株の感染が拡大

彼らはこれまで毎年、桜の写真を中国のSNSに投稿。そのたびに、中国の友人たちから「うらやましい!」「きれいだね!」という反応があったといい、それを期待して、今年も数日前から桜の写真を投稿しているのだが、反応はイマイチだと残念がる。

なぜなのか、数人に聞いてみたところ、彼らが分析した理由は次の通りだ。

まず1つ目の理由は、中国もまだコロナ禍であることだ。

コロナ禍になって以降のお花見シーズンはすでに3年目となり、今年が初めてではないが、今年は厳しいゼロコロナ政策を実施する中国でもオミクロン株の感染が拡大中だ。

ちょうど桜が話題になり始める3月14日から1週間、広東省深圳市でコロナの感染が拡大しロックダウンに入った。

上海でも3月28日から市の東部でロックダウンが始まり、4月1日からは市の西部でもロックダウンが行われることから、市民たちは皆、食料品の買い出し等に必死で「正直、お花見を楽しんでいるどころの場合ではない」という。

「感染が拡大していない北京の友人などは数日前にきれいな桜の写真を投稿していましたが、最近の北京は青空が多いので、桜の写真も映えるんです。でも、このところ、東京は花曇りなので、あまり映えないでしょう?こちらではなかなかベストショットが撮影できないのも“いいね”が増えない理由かもしれません」と彼らはいう。

中国国内でもお花見はできる

2つ目の理由は、数年前から感じていたという、中国国内のお花見ブームの影響だ。

中国でも経済的な余裕やSNSの発達により、お花見をして、その写真を投稿することが流行るようになり、中国国内のお花見スポットは大変な人出だった。

コロナの感染が拡大する以前は、武漢大学の桜並木には全国から観光客が押し寄せていたし、北京や貴州省などにも有名なお花見スポットがある。

そのため、「相対的に日本のお花見の価値が下がってきているのではないか」とある在日中国人は肌で感じているという。

むろん、日本ならではのお花見スポット(京都のお寺、静岡県の河津桜の並木道など)はあるものの、スケールという点では、中国のほうが大きい。

それでも、コロナの前は「お花見といったら、やはりナンバーワンは日本でしょう」という声が大きかったのだが、コロナ禍になって2年以上の月日が経ち、物理的に海外に行けなくなったことから、心理的な距離も遠くなり、同時に関心も少し薄れてきているようだ。

むろん、日本のお花見に関心のある人もまだいて、昨日、杭州在住の中国人の友人は、「いつになったら日本に行けるかな?」という中国語の文章とともに、中国のサイトから取ってきた東京タワーをバックにした桜の写真を投稿し、日本の桜を懐かしんでいた。

このような人もまだいるし、コロナが終わったら、日本の桜を見に行きたいと思っている人もいることはいるだろう。

だが、全体的には「中国国内でもお花見はできるのだし、今はいつ、どこで感染者が急増し、ロックダウンが始まるかわからない」という不安な気持ちもあり、お花見をしようという精神的な余裕は減ってきている。

そうした複数の理由があり、日本のお花見への興味・関心もだんだんと薄れてきているようだ。

ジャーナリスト

なかじま・けい ジャーナリスト。著書は最新刊から順に「日本のなかの中国」「中国人が日本を買う理由」「いま中国人は中国をこう見る」(日経プレミア)、「中国人のお金の使い道」(PHP新書)、「中国人は見ている。」「日本の『中国人』社会」「なぜ中国人は財布を持たないのか」「中国人の誤解 日本人の誤解」「中国人エリートは日本人をこう見る」(以上、日経プレミア)、「なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?」「中国人エリートは日本をめざす」(以上、中央公論新社)、「『爆買い』後、彼らはどこに向かうのか」「中国人富裕層はなぜ『日本の老舗』が好きなのか」(以上、プレジデント社)など多数。主に中国を取材。

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