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取ってつけたような理由で受け取り拒否 杉田水脈議員辞職を求める13万6000筆の署名

小川たまかライター
署名を持って自民党本部を訪れたフラワーデモ主催者と対応した職員

杉田水脈議員の辞職求める署名13万筆、自民受け取らず(朝日新聞デジタル/2020年10月13日)

 「女性はいくらでもウソをつける」発言をした杉田水脈議員に辞職を求める13万6000筆の署名を自民党本部は受け取り拒否。対応した職員は「(この場所では)受け取らない。受け取ったことがない」などと理由を話したが、過去には自民党本部で署名が受理されている。

●「LGBT生産性」発言の抗議署名は受け取られていた

 10月13日午前中、自民党本部に署名提出に訪れたのは、フラワーデモの呼びかけ人である北原みのりさん、松尾亜紀子さんら。

 北原さんらは署名開始時から自民党の野田聖子幹事長代行や橋本聖子男女共同参画担当相に面会や署名の受け取りを求めていたが、10月8日になって野田氏から署名の受け取りを拒否するという連絡があった。

 このため自民党本部に直接署名を持参したが、対応した自由民主会館(自民党本部)の職員は署名を受け取らなかった。

 署名を受け取らない理由については「野田幹事長代行からも申し上げた通り、議員の進退は本人が決めることであり、党としては議員辞職を求める署名は受け取れない」と説明したほか、記者からの質問に「会館(自民党本部)でっていうのは署名は受け取れない。受け取ったことがない」と回答。

 しかし、その場に立ち会ったオンライン署名サイトChange.orgの職員から「署名を受け取ったことがある」と指摘されると、「確認してみます」と言葉を濁した。

 以下がそのやりとり。

職員:会館でっていうのは受け取れない。受け取ったことがない。

Change.org:受け取ったことあると思います。オンラインサイトChange.orgの職員です。ここで署名提出しています。

職員:私が来てからは受け取ったことないです。一応全部お断りしてますので。

Change.org:いつ頃からのお話ですか。

職員:去年、一昨年ぐらいから。

Change.org:去年ここに署名提出に来てます。

職員:いや、私は、そのときいなかったかどうか知らないですけど私は受け取ってないです。

Change.org:前回の生産性発言のときにも自民党本部に署名提出していますし、それ以外の子育て政策でも署名提出しています。

職員:それはちょっと確認してみます。

 やりとりの中で言及されている「前回の生産性発言のとき」の署名とは、杉田水脈議員が「LGBTには生産性がない」という内容の寄稿を行った際の抗議署名。2018年8月に提出されている。参考記事:LGBT 親たちが抗議署名を提出 杉田議員の謝罪求める(2018年8月31日/毎日新聞)

 また、「子育て政策でも署名提出」とは、2019年3月に自民党本部に提出された署名。参考記事:子どもを守るはずのルールを撤廃…?学童の要員維持を求め1万4000人が署名

●「辞職させる権限がないから受け取れない」は本当なのか

 野田聖子幹事長代行は、本日公開されたハフポスト日本版の記事の中で、署名受け取り拒否の理由を次のように語っている。

署名には「辞職」と書かれている。署名を受けて「辞職しなさい」というのは、法律上できないこと。「辞職」と書かれている以上、私にはそういう権限もないし、預かっても法律上できないことはちょっと無理です、とお伝えした。

出典:野田聖子氏「“辞職”と書かれている以上、受け取れない」 フラワーデモが呼びかけた杉田水脈議員への抗議署名(ハフポスト/2020年10月13日)

 これを読む限り、署名を受け取る=杉田議員へ働きかけを行わなければならない、と解釈しているように受け取れる。

 そうであるならば、これまで受け取った署名については、杉田議員へ働きかけを行っていなければおかしいことになる。しかし、前述の「LGBT生産性」発言への抗議署名の際、署名では杉田議員の「謝罪会見」が求められたものの、結局これが叶うことはなかった。

 署名を受け取りつつも署名が求めた要求に対応しなかった過去がありながら、対応することができないから署名を受け取ることができないとはどういうことなのだろう。署名を受け取ってもなんら対応しなかった前回の反省なのだろうか。今回のために取ってつけた理屈に思えてならない。

 「辞職勧告することはできないが署名は受け取る姿勢を見せる」という選択肢もあったのではないのか。

自民党本部前に集まったフラワーデモの主催者や賛同者
自民党本部前に集まったフラワーデモの主催者や賛同者

●「人権侵害発言を繰り返す議員を候補者にしないで」

 自民党本部前で北原さんたちが読み上げた要望書には、次のような文面もあった。

また性暴力被害当事者やその支援団体は、自民党議員にもロビイング活動を行ってきました。今回の発言は自民党議員に対する信頼を損ねると共に、性暴力被害者支援のために制度の拡充に携わってきた政治・行政の方々の努力も踏みにじりました。

(略)

議員辞職は当然ご本人の判断によるものであることは私たちも存じています。ただ杉田氏の議員辞職を望む声がこれほどあること、そしてこのような発言が被害者の尊厳を著しく損ない傷つけるものであることを理解し、口頭注意だけに留まらない措置と、そして二度と、人権侵害発言を繰り返す杉田水脈氏のような議員を候補者にしないなどの措置を執っていただきたく、お願い申し上げます。

出典:「自由民主党総裁・菅義偉様、自由民主党幹事長・二階俊博様」宛の要望書(2020年10月13日・フラワーデモ)

菅義偉総裁、二階俊博幹事長宛の要望書
菅義偉総裁、二階俊博幹事長宛の要望書

 自民党本部前では記者たちが、「幹事長代行を通じて面会のアポを取ろうとして、その日程調整がつかなかったということで(本部へ)出されたことをどう思うか」「生産性発言のときは署名が受け取られているのに(今回拒否するのは)まったく理由になっていない」「なぜ会館の職員が自民党宛の署名を受け取る受け取らないの判断ができるんですか?」など質問を重ねたが、対応した職員は「私からお答えするわけにはいかない」などと言葉を濁して去った。

(画像はすべて筆者撮影)

ライター

ライター/主に性暴力の取材・執筆をしているフェミニストです/1980年東京都品川区生まれ/Yahoo!ニュース個人10周年オーサースピリット大賞をいただきました⭐︎ 著書『たまたま生まれてフィメール』(平凡社)、『告発と呼ばれるものの周辺で』(亜紀書房)『「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を』(タバブックス)/共著『災害と性暴力』(日本看護協会出版会)『わたしは黙らない 性暴力をなくす30の視点』(合同出版)/2024年5月発売の『エトセトラ VOL.11 特集:ジェンダーと刑法のささやかな七年』(エトセトラブックス)で特集編集を務める

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これまで、性犯罪の無罪判決、伊藤詩織さんの民事裁判、その他の性暴力事件、ジェンダー問題での炎上案件などを取材してきました。性暴力の被害者視点での問題提起や、最新の裁判傍聴情報など、無料公開では発信しづらい内容も更新していきます。

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