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板尾創路「今、死んでも、それはそれでいい」

中西正男芸能記者
今思うことをストレートに語った板尾創路

 芸人、映画監督、俳優と様々な顔を持つ板尾創路さん(56)。「関西演劇祭」(9月21日~29日、大阪・ COOL JAPAN PARK OSAKA SSホール、実行委員長・キムラ緑子)ではフェスティバルディレクターを務め、さらに活動の幅を広げています。これまで、まさにオンリーワンの存在として年月を重ねてきましたが「今、死んでも、それはそれでいい」と正直な思いを吐露しました。

56歳になって

 若い時は吉本の先輩を見て「ああなりたいな」とか「あんな番組ができたらエエな」とかいう自分の思いもありました。もっと言うと、単純に「売れたい」「お金持ちになりたい」という願望ももちろんありました。

 でも、ここまでやってきて思うのが“温度”ってあるのかなと。自分が「こうやってやりたい」と熱く思っていても、周りが冷めていてそうでもないことはうまくいかない。

 お笑いも、お芝居も、結局はお客さんありきのものなので、プロデュースする側、制作する側の人がいて、そういう人たちが僕にふさわしいと思ってもらったところに行って、頑張ってそれに近づける。今は、それが一番じゃないかなと思うんです。

 もう僕も56歳になりましたから、お仕事をさせてもらう周りの方々も、ほぼほぼ年下になってきました。そういった人たちから「こういう感じのことをしてもらえませんかね」と頼まれる流れがほとんどです。

 そうやって言っていただくことがまずありがたいし、その思いに何とか応えたい。満足してもらいたい。今の仕事の思いは、そんな感じになってきましたね。

 最近、芝居のお仕事をさせていただくことが多くはなっているんですけど、自分の中で「芝居の方に向かおう」とか「お笑い〇割、芝居〇割」と決めたりとか、そういう意識はないんです。

 僕もオッサンになって、周りの方もずっと僕を見てくださっていて、ありがたいことに僕ががどういう感じの人間かを知ってくださっている場合が多い。となると、やっぱり、僕に合うと考えてくださったものの中で頑張る。それがいいし、その結果が今の自分の仕事状況なんだろうなと。

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芝居との出会い

 30代半ばくらいで「ダウンタウンのごっつええ感じ」(フジテレビ、1991年~97年)とかが終わって、新しい若手も出てきて、不景気になってバラエティーもお金がなくなってきたり。

 そんな中、経験のなかった映画出演の話が立て続けにあったんです。それまでも“芸人枠”というか、そんな感じでドラマにちょこちょこ出してもらったりはしていたんですけど、映画は初めて。「ナイン・ソウルズ」(2003年、豊田利晃監督)と「幸福の鐘」(2003年、SABU監督)でした。

 映画をやらせてもらって、まず時間のかけ方に驚きました。バラエティー番組とかとは全然時間の流れが違うというか。こんなに時間をかけて一つ一つやるんだと。

 あと、芸人の仕事はバラエティーにしても、トークにしても、は自分がやったことがストレートに反映される。自分が考えて、演出して、自分でやって、ウケたらうれしいし、スベったら、自分の責任。自分だけで完結するというか。

 でも、お芝居はまずセリフがあるし、ストーリーがあるし、さらに、それが最終的に映画なら映画として最後出来上がってくるまで、どんな感じになるか、自分でも分からないところがある。それが新鮮だなと。

今、死んでも

 どこで満足するのかは非常に難しい問題で、人間なので、行けば行くほど欲も出てくると思います。でも、現時点でちゃんとお仕事をさせてもらっているし、これまでもお笑いも、お芝居もいろいろやらせてもらった。

 今、死んだとしても、それはそれでいい。振り返れば、本当に良かったなと思えます。仕事がなくなったとしても、同じように思えます。そうなりましたね。今は。もう56歳ですし、あと何年できるのか分からないのも事実ですし。

 今度は「関西演劇祭」でフェスティバル・ディレクターをさせてもらうことになりました。舞台には出してもらったりしてますけど、個人的に演劇にものすごく詳しいわけでもない。ただ、そんな僕がいるとか、吉本興業がやっているとか、演劇ではなく映画監督の行定勲さんが審査員をつとめてらっしゃたりとか、演劇祭ですけど、ちょっと変わった空気がある。そんな中から、面白いことや、面白い人が出てきたらなとは思っています。

 ただ、フェスティバル・ディレクターって、何をする仕事なのか。それはいまだによく分かってないんですけどね(笑)。

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(撮影・中西正男)

■板尾創路(いたお・いつじ)

1963 年7月18日生まれ、大阪府出身。NSC大阪校4期生。お笑いコンビ「130R」のボケ担当。俳優としても活動し、NHK連続テレビ小説「まれ」、フジテレビ系ドラマ「営業部長 吉良奈津子」「僕たちがやりました」、映画「さや侍」「私の奴隷になりなさい」などに出演する。また「板尾創路の脱獄王」「月光ノ仮面」「火花」では監督を務めた。クリエイター、劇団、観客に出会いの場を提供する「関西演劇祭」(9月21日~29日、大阪・ COOL JAPAN PARK OSAKA SSホール、実行委員長・キムラ緑子)ではフェスティバルディレクターを担当している。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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