2020年11月度外食産業売上は前年同月比でマイナス7.8%
日本フードサービス協会は2020年12月25日付で、同協会の会員会社で構成される外食産業の市場動向調査における最新値となる、2020年11月度の調査結果を公開した。それによると同月の総合売上は前年同月比でマイナス7.8%を示した。新型コロナウイルスの感染状況に関して再拡大の動きがあり、客足が再び遠のきを見せている。政府や自治体による行動自粛要請や営業時間短縮要請も足を引っ張る形となった。
全業態すべてを合わせた2020年11月度売上状況は、前年同月比で92.2%となり、7.8%の減少を記録した。これは前回月から続く形で9か月連続の減少。前年同月と比べると日取り(休日や土曜日の日数)の上では休日は1日多く、土曜日は1日変わらず、売上にはプラスの影響。気象環境では雨天日は東京は少なく大阪は多く、平均気温は東京・大阪ともに高めのため、客足への影響判断はわずかにプラスと解釈できる。
他方、新型コロナウイルスの流行による外出自粛や多人数が集まる場所への忌避感は強い。感染者数の増加による第三波の認識がなされ、客数の大幅減が継続する状況となっている。また就業者の在宅勤務も継続されており、就業者相手の業態では苦戦が続いている。
結果として客数は全体では前年同月比でマイナス12.2%を示した。一方で客単価はプラス5.0%となり、結果として売上はマイナス7.8%に。前回月の売上高マイナス5.7%より悪化してしまっている。
業態別に詳しく動向を見ると、ファストフードは全体では前回月から続く形で2か月連続のプラス(プラス0.9%)。ハンバーガーチェーン店がメインの洋風だが、そのメイン企業となるマクドナルドは、2014年夏からの相次ぐトラブルをきっかけとした多様な問題点の露呈による低迷から復活の動きを見せている。今回月では「ドライブスルー、テイクアウト、デリバリーのサービスがさらに充実し、キャンペーンやメディア露出とあいまって」とあり、テイクアウトやデリバリーの選択肢を持つことへの奏功の影響が大きく、売上はプラス10.4%と大幅なプラスに。なおマクドナルド単体の2020年11月における営業成績はプラス9.6%(売上、既存店、前年同月比)と大幅なプラスを示している。
牛丼チェーン店を含む和風は、客数はマイナス7.8%、客単価はプラス3.9%と成し、売上はマイナス4.3%。麺類は客数マイナス15.9%、客単価はプラス2.9%と成し、売上はマイナス13.5%。和風は「テイクアウトもできる高単価の季節メニューが好調であったが、下旬には行動自粛要請等で客足が落ち」とあり、冬定番のすき鍋定食が健闘したものの、新型コロナウイルスの感染拡大で勢いが打ち消されてしまったようだ。持ち帰り米飯/回転寿司は売上がマイナス0.2%。
ファミリーレストラン部門は客数ではマイナス15.1%、客単価はプラス5.5%、売上はマイナス10.4%。全体として「コロナ新規感染者数の増加に伴い、週を追うごとに客足が落ちていき」とあり、客の入りの落ち込みが打撃となったようだ。焼き肉は「各種キャンペーン等により好調を維持した店が牽引し」との言及がある(売上はプラス9.4%)。
パブ/居酒屋部門では、居酒屋の売上はマイナス41.2%、パブ・ビアホールの売上はマイナス50.6%。部門全体では売上はマイナス42.8%を示した。「引き続きコロナによる打撃は他業態よりも大きく、行政からの行動自粛や営業時間短縮の要請が売上不振に拍車をかけ」と説明されており、新型コロナウイルスの流行と業界の体質との相性の悪さをはじめ、多様な影響を大きく受けていることがうかがえる。
ディナーレストラン(高級レストランに代表されるリッチスタイルな専門飲食店)は客数はマイナス26.9%、客単価はプラス2.5%で売上はマイナス26.6%を示した。「『コロナ第3波』の影響をもろに受け、特にビジネス街や繁華街の夜の時間帯の落ち込みは大きく」との説明がある。
現在は可処分所得の減少、中食へのシフト、お酒を飲む機会の変化など、居酒屋にはマイナスとなる環境の変化の真っただ中にある。もっとも居酒屋の業態そのものが時代に取り残されたわけでは無い。牛丼チェーン店の吉野家が運用している「吉呑み」が堅調さを示し、適用店舗数を続々と増やしている。最近ではスマートフォンのアプリと連動する形でのボトルキープなる手法も導入し、さらに注力度を高めている。
牛丼業界の動きやディナーレストランの動向を併せ見ると、外食産業でも消費の二極化が進んでおり、中庸的なポジションの市場が縮小している感は否めない。また消費者の中食志向の拡大や高齢化により、客の一部が奪われている・遠のいている雰囲気も見受けられる(特に持ち帰りができないファミリーレストラン)。吉野家やマクドナルドが夕食メニューに力を入れているのも、高齢化に併せた動きの可能性も否定できない。さらにこれらの動きは総じて、客単価の引き上げという戦略目標にもつながっているとの解釈もできる。客単価の引き上げはファミリーレストランにも生じており、こちらも結果としては売上維持、さらには売上増につながる成果を示している。
新型コロナウイルスの影響だが、そもそも論として店舗が自主休業していれば客が来るはずもなく、営業しても時短や販売品の制限を行うところも多く、イートインは客同士の距離を取るために収容効率が悪化、さらに来店客数そのものが三密忌避で少ないことから、客数は激減する形となった。企業も従業員のリスク回避で集団での外食をひかえたり、リモートワークの浸透で出社する人が少ないため催しで外食を使う機会が無くなり、これも大きなマイナスの影響を与えている。疫病の影響である以上、仕方がないとはいえ、衝撃的な値には違いない。特にその店舗スタイルや就業者向けのビジネスの色合いが強いパブや居酒屋は大きな痛手が継続している。
次回月の12月では、新型コロナウイルスの感染者数再増加で第三波到来が確定するとともに、国や自治体から各種要請が出されるなどで、年末需要が吹き飛んでいるのが実情。一部業態を除けば恐らくは今回月以上に悪い値が出るだろう。
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