英語嫌いな子が増えているという現実
新学習指導要領で文科省は、英語力の強化を打ち出しているが、逆に英語嫌いな子をますます増やすことにつながる可能性もある。
新学習指導要領では小学5年生から正式教科となるほか、中学でも授業時間数を増やすなど英語力強化を大きな目玉と、文科省は位置づけている。しかも中学での目標として文科省は、「短い新聞記事を読んだり、テレビのニュースを見たりして、その概要を伝えることができるようにする」などと示すなど、かなり高い英語力を求めている。ただ授業時間数を増やしただけで実現できるものではなく、授業内容もかなり高度なものになる可能性が強い。
そこで心配されるのが、英語を嫌いになる子どもが増えるのではないか、ということだ。
この3月に文科省は、中学3年生の英語に関する「平成28年度 英語教育改善のための英語力調査」の速報値を発表している。2014年度から毎年行われているものだが、英語力についての格差が大きくなっている状況が読み取れる。
最大の問題は、「英語の学習が嫌い」という生徒が前年度よりも増えていることだ。2016年度において「嫌い」と回答した生徒は45.4%で、前年度より2.2ポイント増加している。これを「微増」と片付けてしまうことも簡単だが、半数近くの生徒が「嫌い」という状況に照らし合わせてみても、深刻に受け取るべきである。
新学習指導要領は2018年度から先行導入され、20年から本格導入される予定でが、すでに学校現場では対策が始まっている。つまり英語力強化の取り組みが、さまざまなかたちで行われているのだ。
それが、半数近くの生徒が「英語の学習は嫌い」と答え、しかも増加しているという現実につながっている。
楽しくないものに熱心に取り組むはずがない。嫌々ながら、押しつけられて学習したところで、とても文科省が目標とするような高いレベルをクリアすることもできないだろう。その結果が、子どもたち相手の英語塾だけが繁盛することにもつながりかねない。
子どもたちが英語を嫌っている現状を、文科省は重く受けとめるべきである。そして、子どもたちが興味をもち、積極的に学習に取り組むような英語の授業づくりを優先させなくてはならない。ただ目標を押しつけるだけでは、子どもたちの英語力を強化することにはならないことに、文科省も気づくべきではないだろうか。