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EUが2035年にハイブリッド販売禁止へ

大場紀章エネルギーアナリスト/ポスト石油戦略研究所 代表
(写真:つのだよしお/アフロ)

2050年脱炭素を目標とすると10年以上寿命のあるガソリンハイブリッド車の扱いの論理的な帰結はこうなる。

これが吉とでるか凶とでるか。(いつの誰にとって?)

中国は2060年脱炭素なので、同じ計算をしてもハイブリッド禁止は例えば2045年になる。そのマーケットをどう考えるか。

日本メーカー(というかトヨタ)とすれば、中国のハイブリッド市場を捨てる経営判断はない。

そこに現在の米欧による中国封じ込め政策、米中関係が今後どのように影響するか。

域内販売をやめることと、域外販売をやめることは別だが、欧州自動車メーカーにとっての中国市場の位置付けはどうなるか。EVさえ売れればいいのか。他の大多数の国の市場も同じ。

ただし、石油の供給側から考えると話はまた変わって来る。

中東はアラブの春以降、以前とは比べようもないほど不安定化してしまい、米国のコミットメントは減る一方。ラストリゾートのアフリカ資源国に対しても、テロや誘拐が増えて、旧宗主国の欧州各国はますます及び腰になっている。

かと言って、ロシアへの依存度を上げたくない。北海油田の生産量はどんどん減って来ている。その意味において、EUの脱ガソリン政策はエネルギー安全保障上正しい。

そして、2014年の石油価格下落以来、石油上流投資は55%も減っている。供給不足になる懸念は益々高まっている。

すべてはタイミングの問題。誰が何を最初に行動すると、誰がどのように得をして損をするか。

エネルギーアナリスト/ポスト石油戦略研究所 代表

大場紀章 (おおば・のりあき) – 1979年生まれ。京都大学理学研究科修士課程修了。同博士課程退学。民間シンクタンク勤務を歴て現職。株式会社JDSCフェロー。専門は、化石燃料供給、エネルギー安全保障、次世代自動車技術、物性物理学。著書に『シェール革命―経済動向から開発・生産・石油化学』(共著、エヌ・ティー・エス)、『コロナ後を襲う世界7大危機 石油・メタル・食糧・気候の危機が世界経済と人類を脅かす』(共著、NextPublishing Authors Press)等

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