子供達のアトピー性皮膚炎の状況をさぐる(2020年公開版)
大人と比べて子供達が発症しやすい疾患の一つにアトピー性皮膚炎がある。発症の要因は多様なものが考えられるが、特定の原因や根源から治療を行う医療方法はまだ見つかっていない。また発症した場合にはかゆみを伴うため、当事者に大きな肉体的・精神的な圧迫となる。この病症に関する子供達の発症状況を、文部科学省が2019年12月に発表した「学校保健統計調査」の内容から確認する。
まずは最新値となる2019年度における、学校種類別・年齢階層別のアトピー性皮膚炎を被患している人の割合。
5歳から6歳に成長すると値が高まり、11歳までは3%台と高い値を示す。この年齢は小学校時代に該当する(おおよそ6歳から12歳までが該当する)。小学校の環境がアトピー性皮膚炎を誘発するのではなく、「小学校に進学して身体検査などを綿密に行う」「保護者の健康意識が高まる」などの理由から、アトピー性皮膚炎が”発覚する”ものと思われる(【メルクマニュアル医学百科の「アトピー性皮膚炎」】の項目によれば「この病気の患者の大半は5歳までに発症し、多くは1歳未満で発症します」とある)。
中学校へ進学するにつれて値が低くなるのは、身体的な成長に伴う抵抗力の向上によるものと考えられるが(同じく医学百科では「小児期に生じたアトピー性皮膚炎はしばしば成人期までに消失したり、大幅に軽くなったりします」とあり、身体的な成長とともに治まる言及が確認できる。また伝染性は無いため、開放的な環境下に置かれたのが原因で治癒するのではないことが分かる)、このデータだけでは確証は持てない。一方で高校生でも2%強との値は、50人に1人(2クラスに1人程度)はアトピー性皮膚炎を被患しているとの実態を示している。
これを男女別に見ると、おおよそ女性の方が被患率は低い。
小学校から高等学校まで男女間では男性が女性よりも被患率が高い値との結果が出ている。原因は不明だが、中高生の場合は「女性の方が成育が早く、体力が付きやすいから」と考えることができる(その場合でも小学校の説明はつかない)。ホルモンの影響によるもの、あるいは遺伝子レベルでの男女の差異によるものとの説もあるが、まだ類推の域を出ていない。この状況は喘息でも確認されており、因果関係はともあれ相関関係のある事象として、同じ要因が一因として想定されるとの点で、注目すべき動向に違いない。
最後に経年推移。
いくぶんの起伏、順位の変動はあるが、概してアトピー性皮膚炎の被患率は減少傾向にある。特に幼稚園の減少傾向は顕著なもの(人数ではなく率なので、子供の人数そのものの減少とは何ら関係がないことに注意)。数字動向だけではその原因をたどることはかなわないが、上記の通り原因こそ今なお不明ではあるものの、関連性を有する事象は多数確認されており、対策などが講じられているのも減少の一因だろう。ただしここ数年では小学校から高等学校にかけて、おおよそ増加傾向を示しているのが気になるところ(検査がより厳密になった結果の可能性も否定できないが)。
アトピー性皮膚炎は見た目、そしてかゆみの病症も併せ、子供には精神的・肉体的に大きな負担となる。また対症療法においても負担は多大なものとなる。理不尽さを覚えることも多いだろう。周囲の人においては、十分以上の配慮を願いたいものである。
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