世界最大排気量2500cc「ロケット3R」 スペックからその凄さを読み解いてみた
2010年1月から国内で発売を開始したトライアンフのニューモデル「ROCKET 3 R」。量産市販車として世界最大排気量となる2500ccを誇る超ド級ロードスターの正体を探ってみたい。
さらなる排気量アップと軽量化で別モノに
初代ロケットIII(3がローマ数字だった)が2294ccの直列3気筒エンジンを搭載して登場したのが2004年。その後、マイナーチェンジとともに派生モデルを展開しながら現在に至っているが、歴代のキャラクターとしては巨大な排気量を生かしたドラッグマシン的な直線番長か、あるいは筋骨隆々のメガクルーザーといった趣であった。ちょっとキワモノっぽい雰囲気も併せ持った異端児的な存在だったのだ。
それが新型ロケット3Rはどうだろう。IIIが3になってRがついた新型はまったく別のバイクになったと言っていいだろう。見た目もがらりと変わってスタイリッシュに洗練され、エンジンと車体は新設計となり排気量も2458ccまで大幅に拡大。
車重もトータルで40kgも軽量化され、乾燥重量では291kgとビッグネイキッドとそう変わらないレベルまで絞られている。
もはや規格外のスポーツモデルだ
足まわりも一新され、サスペンションは前後にSHOWA製アジャスタブルタイプを装備し、ブレーキもブレンボ製の最高峰タイプの4Pラジアルモノブロックを前後トリプルディスクに装備。
また、最新の電子制御が投入され、ライド・バイ・ワイヤーによる4段階のライドモードやコーナリングABS&トラクションコントロール、坂道発進が楽にできるヒルトコントロールなどが標準搭載された。足まわりや電子制御の充実ぶりを見ると、まるで超巨大スポーツモデルのような作りと言っても過言ではない。
スペックが証明する走りの性能
さらに目を見張るのがディメンションの改良だ。初期型に比べるとキャスターで約4度(32度→27.9度)、トレール量で約17mm(152mm→134.9mm)、ホイールベースで18mm(1695mm→1677mm)少なくなった。これを簡単に言うと、「より俊敏によく曲がる設定にした」ということ。
加えて車重もトータルで40kg、とりわけエンジン単体で18kgも減量しているということで、数字からも大胆に軽量・コンパクト化されたことが分かるはず。つまり、新型は完全にスポーツ志向のマシンへと舵を切ったということだ。
最大トルクはリッタークラスの2倍以上
パフォーマンスもさらに輪をかけて爆裂している。初代も凄かったが、新型では縦置き水冷3気筒エンジンは排気量を2458ccに拡大し最高出力を11%増しの167ps/6000rpmまでアップ。クルマのエンジンを積んだ一品モノ的なカスタムバイクは別として、量産市販車としては正しく世界最大排気量だ。
もっとも最高出力値で上回るバイクも少なくはないのだが、注目すべきは最大トルクである。221Nm/4000rpmという数値は一般的なリッタークラスのスポーツバイクのなんと2倍、もしくはそれ以上! もちろん断トツで世界一だ。
100km/hまで2.89秒、スーパーカー並みの加速力
この最大トルク値が意味するものは加速力である。最高出力=パワーは仕事率なので、高回転までシュンシュン回るエンジンが有利で最高速が伸びる傾向にある。
一方、最大トルクとは大まかにはクランク軸を回す力であり後輪が路面を蹴り出す勢いそのものなので加速力に直結している。
スペック的には0-100km/h加速2.89秒と公表されているが、これは4輪に例えると数千万円クラスのスーパーカー並みだ。
これ以外にも新型ロケット3Rにはブルートゥース接続によるコネクティビティ機能が搭載されていて、簡易的なナビが使えたり手元のスイッチでGoProを操作できる機能も追加された。
知れば知るほど既存のジャンルには収まらない異端にして孤高の存在だが、こんな凄まじいバイクを平然と作って世に出してくるトライアンフというメーカーもまた凄いと思うのだ。
※原文より筆者自身が加筆修正しています。