米中が韓国を同時圧迫…文在寅「オウンゴール」で深まる危機
朝日新聞は19日、「米国がロシアとの中距離核戦力(INF)全廃条約から離脱したことを受け、中国が8月、米国の新たな中距離ミサイルを配備しないよう日韓に警告していたことがわかった」と伝えた。
同紙によれば、日中韓が8月に北京で外相会談を行った際、中国の王毅外相は河野太郎外相(当時)との2国間会談で、「日本に米国の中距離ミサイルが配備されれば、日中関係に重大な影響を及ぼす」と発言。中韓外相会談でも、韓国の康京和(カンギョンファ)外相に同趣旨の発言をしたという。
米国が迫る「踏み絵」
米国が新たな中距離ミサイルの開発と配備に前のめりになっているのは周知のとおりで、配備候補地には当然、日本と韓国も入っていると考えるべきだ。配備構想が具体化すれば、両国とも中国との間に難しい問題を抱えることになる。
とりわけ厳しい状況に追い込まれそうなのが韓国だ。中国は現状においても、韓国に対して「限韓令」と呼ばれる圧力を加えている。限韓令とは、韓国が2016年に米国の迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の在韓米軍配備を公表して以降に、中国政府がとった様々な報復措置を意味する言葉だ。
THAADの韓国配備は北朝鮮の脅威を理由としたものだったが、同システムのレーダーは最大探知範囲が1000キロに及ぶことから、自国内の弾道ミサイルを無力化されることを懸念した中国が強く反発。企業の韓国への慰安旅行や韓流アーティスト・作品の自国内での上演を制限するとともに、中国に進出した韓国企業にも様々な圧力を加えた。韓国側が被った損失は、莫大な規模になる。
こうした事態を受け、韓国政府は2017年10月31日、中国との間で「THAAD追加配備、米ミサイル防衛システム(MD)への参加、韓米日軍事協力の3つをしない」ことで合意し、事態の鎮静化を図った。その後、限韓令は一部で緩和されながらも、今なお大きな影響を残している。
このように、THAADだけでも大変なのに、さらに中距離ミサイルが加わったらどうなるか。中国はいっそう苛烈に韓国を圧迫するだろう。
こうした韓国の苦境に対し、米国が配慮を示す様子は見られない。米国が延長を切望する日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を文在寅政権が断行すれば、状況はいっそう悪化するだろう。米国は「わが国か中国か、どちらを選ぶか」と踏み絵を迫るかのごとく、中距離ミサイル配備をゴリ押しする可能性もある。
(参考記事:韓国は「自滅の道を歩むだろう」…北朝鮮がシビアに予言)
これこそが、GSOMIA破棄が文在寅政権の「軍事的オウンゴール」と呼ばれる所以でもある。