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日銀がYCCを解除するチャンス到来?

久保田博幸金融アナリスト
(写真:イメージマート)

 シリコンバレーバンクに続いて、シグネチャー・バンクも経営破綻するなど、米銀の相次ぐ破綻によって、13日の欧米の国債利回りが急低下した。

 米債は2年債などを中心に利回りは急低下。10年債利回りは一時3.41%まで低下して3.57%となっていた。3月2日に米国債券市場では、全ての年限で利回りが4%を上回っており、米10年債利回りも4%台に乗せて4.06%となっていた。

 米10年債の利回りが2年債を下回る逆イールドの幅は0.40%と大幅に縮小した。こちらは一時1%近辺にまで拡大していた。

 この日は欧州の国債利回りも急低下していた。3月上旬にドイツの10年債利回りは2.75%あたりに上昇していたが、13日には2.25%に低下した。

 米銀の経営破綻を受け、FRBの利上げにブレーキが掛かるとの予想も一時強まった。

 21日、22日に開催されるFOMCでは利上げ幅の再拡大観測が後退、さらに0.25%のままとの見方も次第に後退、利上げそのものが停止されるとの見方が強まってきた。一部に利下げ観測も出ていたようだが、さすがにそれはないのではなかろうか。

 一部銀行の経営破綻で米国景気が大きく冷え込み、インフレが急速に沈静化するとは現状は考えづらい。ただし、金融システムそのものへの不安感は強まっており、今回の米銀破綻のきっかけのひとつが大幅な利上げによる国債価格の急落にあったこともあり、いったん利上げを停止して、様子をみることは考えられた(その後、この観測も急速に後退し、0.25%の利上げとの見方が大勢に)。

 ということで、日銀にイールドカーブコントロール解除の絶好のタイミングがやってきていた。

 13日の債券先物のナイトセッションではなんと一時2円以上も上昇していた。サーキットブレーカーも発動していたとみられる。14日の国債利回りも急低下している。10年369回はこれを書いている時点では出合っていないが、10年債利回りは一時、0.24%に低下した。日銀のレンジ上限の0.5%の半分以下である。

 日銀は「国債売買市場における利回り水準が0.5%に達しないと見込まれる場合には、連続指値オペの対象としないことがあり得ます」としていた。14日がまさにそのタイミングであったのに、日銀は指値オペをオファーしていた。長期金利のコントロール主の相場観はどうなっているのであろうか。

 10年利回りが0.5%を大きく下回っているいまこそ、市場に大きな影響を与えずにイールドカーブコントロールを解除することができる。こんなチャンス、見逃す手はないと思うのだが。

 しかしむしろ国債利回りの上昇が金融機関の経営に影響を与えかねないので、日銀のイールドカーブコントロールの修正、解除は先送りされるとの見方すら出てきた。

 いま解除してしまえば、無理なく解除できそうなのであるが。いまの日銀はそんな機動性も持ち合わせてはいないようである。実はむしろさらなる「工夫」で抑えに掛かっていたぐらいであった。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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