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【新型コロナウイルス】休職や失業で生活が苦しくなったら遠慮なく公的支援の利用を

大西連認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい 理事長
イメージ写真です(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

【新型コロナウイルス】休職や失業で生活が苦しくなったら遠慮なく公的支援の利用を

本日(3月2日)から、多くの自治体において、小中高校の一斉休校が始まりました。小中高校生は全国で約1300万人と言われていますから、家族や関係者も含めると、その影響は非常に大きいものでしょう。

特に、小学校低学年などのお子さんがいる家庭では、子どもを家に一人で一日中留守番をさせているわけにもいきません。

共働きやひとり親家庭などでフルタイムで働いている人は学童保育などをフル活用することも可能でしょうが、パートタイムなどで働いている人で学童保育の利用が難しい人もいます。(学校の教室等を開放する案も出ているようですが、どのような運用がされるのか現状では不透明です)

そして、これは必ずしも子どもたち(もしくはその家族)だけの問題ではなく、経済活動にも影響します。

小売店や飲食店などで、新型コロナウイルスの影響で、感染予防やお客さんの減少で営業時間を短縮したり、一時的に休業したりするところも出ていると聞きます。

しかし、今後は、お子さんがいる人がパートなどで多く働いている店舗等でも、子どもの保育のために出勤できないなどの理由で人手の確保ができずに営業できない、などがおこることも予測されます。(すでに起きているところもあるでしょう)

新型コロナウイルスへの対応として、経済活動に影響が出て、会社や事業所の営業が縮小したり、休業したりすると、当然ながらそこで働いている人の生活にも影響します。

特に、非正規で働いている人、そのなかでも時給や日給で働いているようなより不安定な働き方をしている人には最も大きなしわ寄せがいく可能性があります。

安倍総理は「休職にともなう所得の減少に手当をする」と言っているが…

2月29日におこなわれた記者会見において安倍総理は、一斉休校にともなう保護者の所得の減少について、

「保護者の皆さんの休職に伴う所得の減少にも、新しい助成金制度を創設することで、正規・非正規を問わず、しっかりと手当てしてまいります。」

と話しています。

そして、新型コロナウイルスによる影響を受ける企業側に対しても、

「新型コロナウイルスの感染が世界的な広がりを見せる中で、海外からの観光客の減少に加え、工場の製造ラインを維持できるのかといった不安も拡大しています。業種に限ることなく雇用調整助成金を活用し、特例的に1月まで遡って支援を実施します。」

と答えています。

また、同会見のなかで、「今後10日程度のうちに緊急対応策を政府として用意する」としています。

これらを考慮すると、休職や休業等にともなう所得の減少への支援策を3月10日前後までに策定する、と考えることができます。

また、観光業などに限らず、業務の縮小や営業停止等を判断せざるを得なくなった企業、事業所への支援、そして、お子さんがいる家庭のみならず、影響を受けて休職等をした人には何らかの支援がおこなわれる、と考えてよいのではないかと思いますが、まだ具体的な政策は明らかになっていません

これらの対策が整うことを期待しつつも、問題は、こういった政府の具体的な支援策がスタートするまで「待てない人がいる」ということです。

政策が始まる=すぐさま困っている人にお金が行き渡る、ではない

政策がスタートして実際に困っている人の手元にお金が届くまでには当然ながらタイムラグがあります。

仮に安倍総理の説明の通りに、3月10日ごろまでに具体的な支援策が発表されたとして。

その後に制度利用の窓口なりが設置され、休職した本人か事業者側になるのかわかりませんが書類等を用意してその制度を申請し、申請が受理されたのちに審査を経て決定が出て、そこではじめて補償される金品が手元に届く、という流れが想定されます。

もしくは、事業者側が先に金品を休職した人などに支払い、あとで事業者側がその支援制度に申請する、という流れも考えられますが、これだと資金繰りが苦しい中小企業などでは実施が難しくなる、制度利用のハードルがあがる可能性もあります。

いずれにしても、政策ができるイコール即座に必要な人にお金が行き渡る、とはいかない、ということです。

必要な人に支援が届くまでの「つなぎ」をどうするのか、ということを考えなければなりません。

貯金がない、少ない世帯はどうしたらいいか

厚労省の国民生活基礎調査(2015年)によれば、貯金がない世帯は全世帯で14.9%。児童がいる世帯でも14.6%であり、母子世帯だと37.6%となります。

もちろん、ここで「貯金がない」とされたすべての世帯が、今回の事態で休職等になり、収入が少なくなる、とは限りません。

しかし、新型コロナウイルスの影響により休職する人のなかに、もともと所得が少ない人、ギリギリで何とか生活していた、という人は一定数含まれると考えるほうが自然でしょう。

特に、非正規で働いている人、時給や日給で働いている人のなかには、日常的に生活が苦しい、という人も少なくなく、休職等をせざるをえない状況になってしまった際に、最も経済的な影響を受ける、と言えます。

彼ら・彼女らは、休職の際の支援制度ができたとして、実際に手元に給付金や補償金等の支援が届くまでのタイムラグをまかなう貯えがありません。

では、その「つなぎ」をどうすればいいでしょうか。

1か月分の支出をまかなえなさそう…遠慮なく生活保護を申請しましょう

生活保護制度は働いている人でも健康な人でも、収入と資産が生活保護基準を下回れば利用できる制度です。

生活保護基準は年齢や世帯人数、住んでいる地域などによっても異なりますが、都内だと単身で約12万円ちょっと。(生活費分と住宅費分を合わせて)

この金額に満たない場合に、足りない分の支給を受けることができます。

生活保護制度の詳細についてはこちらをご参照ください。

厚労省HP 生活保護制度

もやいHP 生活保護制度とは

それこそ、3月中に生活が立ち行かなくなる、と思う状況でしたら、生活保護制度の申請をご検討ください

申請はお近くの自治体の窓口(福祉事務所)で可能です。

生活保護制度は、収入減などで一時的に利用し、収入が生活保護基準を超えて必要なくなったら利用をやめる、などのこともできます。

また、失業した方などの場合は、生活保護を利用しながら再就職へのサポートをしてもらうことも可能です。

遠慮せずに、まず一度、公的機関へのご相談を検討してください

しばらくは何とかなりそうだけど貯えが少なく不安だ…生活福祉資金貸付もあります

1か月はなんとかなりそうだが、手持ち金が少なくなるのは心配だ、貯金は少しあるのであと数万円あれば何とかなる、などの状況の人もいると思います。

そういった状況の人には、生活福祉資金貸付という仕組みがあります。

これは、生活困窮した際に、生活再建のための費用や次の収入までの「つなぎ」などを目的として貸し付けを受けられる仕組みです。

厚労省HP 生活福祉資金貸付

この生活福祉資金貸付についてはお近くの社会福祉協議会にて利用することが可能です。

こちらは申請してその日にすぐ必ず貸し付けを受けられる、というものではないので、少し余裕をもって申請に行く必要があります。

生活に困ったら公的支援を利用しましょう

新型コロナウイルスによる影響で、今後も、仕事を失ったり、休職等の対応を迫られる人が増える可能性があります。

安倍総理は記者会見のなかでここ1~2週間が拡大するか収束するかの瀬戸際である、と話していましたが、経済に及ぼす影響ははかり知れませんし、こういった状態がいつまで続くか現段階では予測がつきません。

低所得の人など生活が苦しい人は、自分の生活を守ることを最優先に、遠慮なく公的支援の利用をご検討ください

この記事で紹介した生活保護制度や生活福祉資金貸付以外にも、生活困窮者自立支援制度など、さまざまな支援制度があります。

お近くの自治体にご相談ください。

※この記事は3月2日12時時点で公表されている情報をもとに作成しました。支援制度等の情報は今後随時アップデートされる可能性がありますのでご注意ください。

認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい 理事長

1987年東京生まれ。認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい理事長。新宿での炊き出し・夜回りなどのホームレス支援活動から始まり、主に生活困窮された方への相談支援に携わっています。また、生活保護や社会保障削減などの問題について、現場からの声を発信したり、政策提言しています。主著に『すぐそばにある貧困」』(2015年ポプラ社)。

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