ジャニーズ事務所の会見でNG記者リストが出た理由
2日に行われたジャニーズ事務所の会見で、質問を当てないNG記者リストがあったことが大きな話題になっています。
ジャニーズ事務所はリスト作成には関わっていないと、重ねて強く関与を否定しています。
ただ、場を仕切ったコンサルティング会社が独断で作ったものだったとしても、そういった会社に依頼し、ジャニーズ事務所の名前で開いた会見でこんなことが起こってしまった。その時点でダメージは甚大です。
なぜ、こんなことが起こったのか。
ジャニーズ事務所創業から“60年分のツケ”。そんな気がしてなりません。
これまで何かネガティブなことがあっても、ほとんど会見をしてこなかった。会見のノウハウがない。ゼロではないが場数が少ない。
何か案件があると、担当記者を呼んで説明をする。情報を外に伝えはするが、会見のように誰が来て、何を聞かれるか。それが分からないガチンコ勝負のリングにはほとんど上がってこなかった。
非常に存在の大きな事務所だからこそ、独特のコントロール方法を所有してきた。となると、今回のような大きく、重いことがあった時に会見を誰かに頼むしかない。ただ、よそに頼めば、どれだけ丁寧に説明しようが、齟齬が出る危険性は一定数あります。
これまで数多の会見を取材してきましたが、2019年の吉本興業は闇営業問題。それを受けての会見は吉本の社員さんが仕切っていました。島田紳助さんの引退会見や、その他、所属タレントの不祥事に関する会見も自前でやってきました。
吉本のみならず会見を自社でやるとなると、多くの場合、司会は広報担当の役員さんなどが務めます。日々、記者といろいろなやり取りをする立場にある人なので、今回のようなリストを作らずとも、その何十倍、何百倍のデータがその人の頭には入っています。
それをもとに、どう会見を仕切るかはその人次第ですが、とにもかくにも、今回のようなリストを作る必要がない。それが僕の知るプロの仕事であり、プロが仕切る会見の現状です。
そういった、芸能の現場に密接した人が仕切った会見ではない。だからこそ、リストなんてものを作成しておくしかなかった。
そして、2日の会見は非常に荒れた場になりました。会見時間2時間、質問は一社一問。不祥事の会見でそんなルールが設けられた。そんな不条理が根底にあるのは間違いありませんが、歪なルールのもと、約300人も会見場に報道陣がいる。挙手してもなかなか当たらない。フラストレーションがたまりやすい状況が重なっていましたが、さらにそれを進めたのが一部記者の質問内容だったと考えています。
これは9月7日のジャニーズ事務所の会見でも多々見受けられたことですが、質問ではなく、自説を語る。必要以上に東山紀之さんら出席者にきつい言葉で詰問する。そんな場面がありました。
本当のことを聞くためにあるのが会見。特定の記者の演説会でもなければ、登壇者に一太刀を浴びせて悦に入るために開かれているものでもありません。
僕がデイリースポーツに入社したのは1999年ですが、その頃からずっと自説を語る記者も中にはいました。ただ、そういった記者の存在が今回のジャニーズ会見に限らず、ここ数年でより目立つようになった。
その理由は会見の可視化だと考えます。
1時間なら1時間、2時間なら2時間、会見の全てがインターネットなどで簡単に見られる時代になりました。
本当のことを聞くための場が、ある意味、見世物になっている。多くの人が見る注目番組のようになっている。
そうなると、自分の“株価上げ”にその場を使う人間も出てくる。特に、今回のジャニーズ会見のように、選別なく、申請すればどういった立場の“取材者”でも入ることができる。そういった場では、よりアピールが起こりやすくなります。
記者会見というシステムが曲がり角に来ている。それを痛感する場でもありましたが、ただ、会見以外にどんなシステムがあるのか。それもまた難しい話です。
記者会見は何のためにあるのか。そして、記者は何のためにそこにいるのか。それを多くの人が考えることが、第一歩であり、最重要なのだとも思います。
これはジャニーズ事務所の問題にとどまらず、実に根が深い問題です。