決定会合を中断させてまで日銀総裁を国会に呼ぶ意味があったのか
10月7日は日銀の金融政策決定会合二日目だがこの日、異例の事態が発生した。黒田総裁が決定会合の最中にも関わらず、国会の予算委員会に呼ばれたのである。このため7日の金融政策決定会合は途中、中断された。決定会合が中断されるのは1998年9月以来で極めて異例となる。
1998年9月24日の際は当時の速水総裁が、月例経済報告等に関する関係閣僚会議に出席のため、9時から9時22分の間、会議を欠席した。この間は、藤原副総裁が、日本銀行法第16条第5項の規定に基づき議長の職務を代理したと、当時の決定会合議事要旨には記されている。ただし、このときは衆院の金融安定化特別委員会への出席を求められてのものであったようである。今回は民主党の福山議員によって出席を求められたそうである。
日銀法第54条3項には次のような規定がある。
「日本銀行の総裁若しくは政策委員会の議長又はそれらの指定する代理者は、日本銀行の業務及び財産の状況について各議院又はその委員会から説明のため出席することを求められたときは、当該各議院又は委員会に出席しなければならない。」
これには特に例外は設けられておらず、このためいわゆるブラックアウト期間中での国会への出席はこれまでも確かに何度かあった。しかし、金融政策決定会合当日のしかも二日目という金融政策を決定するその日に呼び出しが掛かるというのは、まさに異例の事態といえる。
今回の日銀の金融政策決定会合では金融政策はこれまで通りの現状維持となることが予想され、市場での関心は極めて薄く、そのようなタイミングではかまわないとの見方もあるかもしれないが、そうではないだろう。
もしかすると今回の総裁の国会出席については、予算委員会のスケジュール上、どうしてもこのタイミングでしかなかったのかもしれない。しかし、このタイミングで日銀総裁に出席してもらわねばならない質問でもない限りは、いくら法律では国会出席が優先されようと、このようなことは本来控えるべきものではなかろうか。
米国では大統領に次いでFRB議長が大きな影響力を持つとされている。日本でも日銀総裁はそれなりの影響力は持っているはずであり、金融政策決定会合も金融経済に影響を与える重要な会合のはずである。黒田総裁も7日の会見で「内外、金融市場を含めて(金融政策決定会合の)決定に対する注目は高い。そういうことについて引き続き関係各位のご理解をいただきたい」と訴えた(7日の日経QUICKニュースより)。
実際に参院予算委員会の質疑を見てみたが、当日の総裁会見でカバーされる程度の質問でしかなく、二日目の決定会合を中断させてまでの日銀総裁を国会に出席させた意味がわからない。このようなタイミングの中央銀行総裁の国会出席は海外でもあまり例がないようであり、かなりの違和感を覚えるものである。