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山崎まさよしさんのライブ騒動の根底にあるSNS社会のしんどさ

中西正男芸能記者
(写真:アフロ)

シンガー・ソングライターの山崎まさよしさんが21日に茨城・水戸市民会館で行った公演が物議をかもしています。

これまでのライブより少ない8曲の歌唱。さらに「今日はあまり歌いたくない」などの発言。そういった要素に端を発し、山崎さんの所属事務所の謝罪、さらにチケットの払い戻しと余波は広がっています。

そもそも、ライブはナマモノ。もちろん、いろいろな考え方がありますが、何が起こるか分からない。「いつもと違う」「こんなの見たことない」。それも含めて楽しむのがステージという考え方もあると思います。

ただ、お金を払って行ったお客さんが「今日は満足できなかった」となれば、それは山崎さんのみならず、全ての演者が無視できない言葉ではあります。そこに真摯に向き合うのがプロの演者だとも思いますが、さらに事を大きくしているのがSNSの存在です。

以前ならば、音楽、演劇、お笑いなどどんな舞台であっても、行ったお客さん同士が帰り道に居酒屋さんなどに立ち寄って「今日は面白かった」「あれは無いわ」などとしゃべるにとどまっていました。

ただ、今はSNSがある。今回の山崎さんの件でも、ライブ中から否定的な意見が数多く投稿されていました。それが起点となり、ライブには行っていない、山崎さんのことをそこまで知らない人も流れに参加してきます。

結果的に、大きな渦っぽいものができるものの、それを形成しているのはほとんどがライブに行ったお客さんではなく“その他”の人たち。

もちろん、誰が何を思おうが、何を発信しようが良いのですが、これまでクローズだった空間がSNSによって可視化される。単に可視化されるだけならばまだマシですが、思わぬ“尾ひれ”がついて拡散される。

今さら、止めようもないのでしょうが、SNS社会ど真ん中の作用があっのが、今回の山崎さんの話だったと考えています。

これはライブのみならず、ラジオなどにも適用されることです。

ありがたいことに、僕も週に3番組ラジオに出演させてもらっていますが、ラジオという空間はとても緊密で、とても温かい場です。

演者、スタッフ、リスナーが同じ方向を向いている。出演している人は「熱烈なファンが集まる小さなライブハウス」に近い感覚で「みんななら分かってくれる」という感覚でしゃべっている部分もあるかもしれません。

ただ、それがSNSで無機質に広められると「この人、こんなひどいことを言ってたの」になりかねない。

同じ方向を向いた同志なら分かり合えることでも、文字になって、妙な尾ひれがつくと、意味がまるで変わる。この恐ろしさは、ライブ会場でのそれと同種のものだと思います。

重ねて綴りますが、もうこの流れがフツーであり、ここから逆に進むことはないのでしょう。しかし、騒動のパッと見の大きさと核の部分。ここに乖離がないか。

騒動の“体脂肪率”。そこを見極めることが大切な時代になっていることは間違いありません。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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