聴く人は約1割…ラジオを聴く人の実情(2021年公開版)
映像も配信できるテレビには情報量の面で太刀打ちできないものの、ラジオもまた利用ハードルが低く、ながら聴取ができる電波メディアとして多くの人に愛されている。今回はNHK放送文化研究所が2021年5月に発表した2020年国民生活時間調査(※)の報告書をベースに、ラジオの聴取動向の現状や推移について確認を行う。
次に示すのは調査各年における、ラジオの行為者率。「行為者」とは指定された行動(今件ならばラジオを聴くこと)を実際に15分以上連続して行った人のこと、「行為者率」は指定された時間に該当行動を15分以上した人が、属性対象人数に対しどれほどいたのか、その割合を意味する。また今件のラジオには物理的なラジオ機器以外にカーラジオ、らじる★らじる、radiko(ラジコ)経由からの聴取も該当する。
今調査によればラジオの行為者率は直近年の2020年では10%近く。時代の経過とともに行為者率の減少傾向を見せている。
年齢階層別に動向を確認すると、いくつかの属性でぶれが生じてはいるが、どの年齢階層でも押しなべて時代の流れとともに行為者率が減る傾向が見て取れる。破線矢印は特定世代の20年におけるシフトを示したもの。
高齢者部分にややばらつきがあり、70歳以上になると減少する調査年もあるが、大勢としては「年を取るに連れてラジオ行為者率が増加する」「時の流れとともに行為者率そのものが減少している」との解釈で間違いない。
これらの流れを見るとラジオ行為者率の変化は、若年~中年層で特に大きく起きているのが見て取れる。理由はいくつか考えられるが、例えば「ラジオコンテンツの若年層のニーズとの剥離」「テレビのながら視聴の増加で、ラジオがその座を奪われてしまった」「若年層が時間を費やすメディアが多様化し、ラジオの優先順位が下がった」などが挙げられよう。
また、グラフ中矢印でいくつか動きをトレースしているが、年齢階層ではなく世代で動きをトレースすると、「同じ世代の人が年を取ると、ラジオを聴かない人が増える」ようすが分かる。例えば男性20代・2000年の行為者率は12.5%。10年経過すると2010年では30代になるわけだが、もし同じようにラジオを聴取し続けていれば「男性30代・2010年の行為者率は12.5%」でなければならない。しかし実際には10.0%と、2.5%ポイントも減少している。
東日本大地震により4マスの中ではメディア単位との観点において、ラジオが大きく見直されるようになった。地震をきっかけにラジオを押入れや物置から引っ張り出して聴き入り、そのまま習慣化してしまった人も少なくあるまい。また「有益性」との点でも「ラジオは頼りになる」との認識を覚えた人も多いだろう。2020年に限れば一部属性で2015年と比較して行為者率が増加する動きを示しているが、新型コロナウイルス流行による巣ごもり化現象が、ラジオ聴取に影響した結果が数字となって表れたとする可能性は否定できまい。
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※2020年国民生活時間調査
住民基本台帳から層化無作為二段抽出法によって選ばれた10歳以上の日本国民7200人を対象に、2020年10月13日から18日にかけて郵送法によるプリコード方式で行われたもので、有効回答数は4247人分。過去の調査もほぼ同様に行われているが、2015年以前は配布回収法によって実施されている。
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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。
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