日本でのコンクラーベ、日銀総裁人事の行方
ローマ法王ベネディクト16世は11日、枢機卿会議で高齢を理由に今月28日で法王を退位する意向を表明した。法王は事実上の終身職であり、存命中の退位は極めて異例。1415年のグレゴリウス12世以来、約600年ぶりとなるそうである。ベネディクト16世は、後任選出のためのコンクラーベの開催を要請した。
日銀の白川総裁も4月8日の任期満了を待たずに3月19日に辞任すると発表した。3月19日の副総裁の任期満了に合わせることで、空白の期間の分を調整する格好となる。日銀総裁が任期前に辞任するのは、1998年3月の松下康雄氏以来となる。
日銀の政策委員などを決める国会同意人事は、政府が国会に候補を提示し、衆参それぞれの本会議で同意を得ることが必要となる。過去には財務省などを中心に候補者がリストアップされ、政府が最終的な候補者を決定する格好となっていた。ところが前回の総裁人事では、ねじれ国会となる中、当時の野党であった民主党は、与党の自民党が提出してきた財務省出身の総裁候補を参院でことごとく否決し、戦後初めて総裁ポストが空席となるという異常事態が発生した。この際には結果として官邸主導で人事案が決められていったようである。
今回の日銀総裁と副総裁の人事も、報道等によれば官邸主導というか、安倍首相自ら候補者をピックアップしているように思われる。その人事案が今週中にも発表されるのではないかとされている。果たしてどのような人事案が発表されるのか注目される。コンクラーベでは新法王が決まると白い煙が煙突から出るそうだが、首相官邸から果たしていつ白い煙は出てくるのか。その合図が出るには、かなり難解なパズルを解く必要もありそうである。
今回の日銀総裁と副総裁の後任人事には、いくつかの条件があり、それらをクリアーしなくてはいけない。安倍首相が候補者を選ぶ際にはいくつか超えなければいけないハードルがある。大きな前提となるのが、大胆というか次元の違う金融政策を受け入れる人物であること。さらに参院で過半数の賛成票が必要になる。今回もまたこれが大きなネックとなりうる。
民主党が、公正取引委員長に杉本和行元財務次官を充てる国会同意人事案で、「事前報道ルール」を盾に政府側の提示を拒否した。これにより状況が大きく変化したように思われる。みんなの党については日銀総裁の独自の候補者を発表し、さらに今回の公正取引委員長の人事案について反対の意向も表明している。みんなの党と維新の会の間でも、溝も深まっている気配もある。
つまり参院で日銀総裁の同意を得るための数合わせはかなり難しい状況にある。前回の日銀総裁人事での教訓もあり、安倍政権は民主党の歩み寄りを期待していた可能性もあるが、ここにきて対立色を強めたことで、民主党の賛成を得られるかどうかもかなり不透明な状況にある。みんなの党と維新の会についても、それぞれから同意を得られる人事案を出せるのかは、なかなか難しい状況にあると思われる。
安倍首相、麻生財務相などから次期日銀総裁にふさわしい人の条件が出されているが、それよりも参院で通る人事案が果たして提出可能なのか、こちらの方が問題となりそうである。
今回の人事案は日銀総裁と副総裁の3人まとめて出されるとみられ、その組み合わせについても大きな関心事となる。財務省出身者の可能性はあるとともに、3人の中には学者出身、日銀出身者を含めたバランスを取るとの見方もあるが、これもわからない。1998年の人事ではマスコミ出身の藤原作弥氏が副総裁となったが、参院での同意も意識して、同様なサプライズ人事がある可能性も否定できない。現在、有力候補とされる人が選ばれるかどうかもかなり不透明かと思われるなか、とにかく総裁不在という空白の期間だけは、作らないようにしてほしい気がする。