スマホなどでのネット利用率の実情をさぐる
全体では7割近く、20代と30代は9割超え
今や多くの人にとって日常生活では欠かせない存在となったスマートフォン。それら携帯電話(スマートフォンだけでなく従来型携帯電話やPHSも含む)によるインターネットの利用はどれほどまでに行われているのか。総務省が2017年6月に発表した「通信利用動向調査」(※)の公開値を中心に、その実情を複数の切り口から確認する。
まずは「携帯電話を使った」「インターネットの利用率」。タブレット型端末は携帯電話の範ちゅうからは外されている。ただし「モバイル端末」との表記の場合はタブレット型端末も含める場合もある。今項目では後述する個別区分以外では、タブレット型端末は携帯電話には含まれず、従来型携帯電話(フィーチャーフォン)やスマートフォン、そしてPHSやPDAは携帯電話に該当するものとする。
次に示すのは2016年における全体・年齢階層別のグラフ。過去一年間に一度でも携帯電話などそれぞれの端末を経由してインターネットにアクセスしたことがある人の割合を示している。例えば6~12歳では41.1%なので、調査母体のうち6~12歳全体の中で、過去1年間に携帯電話などを使って一度でもインターネットにアクセスした人の割合は4割強となる次第(インターネット利用についての設問そのものに無回答だった人は計算から除外してある)。昨年の35.7%からは多分の増加が確認できる。
携帯電話本体の利用率やインターネットの普及率同様に、携帯電話によるインターネットの利用率も成人若年層がピークで、その後は緩やかな下り坂を描いている。かつては定年退職後の年齢階層において、減少具合の急激さが見られたが、この数年は緩やかなカーブに代わっており、シニア層にも携帯経由のネットアクセスが地味に普及しつつあることをうかがわせる。とはいえ、定年前後の50~59歳と60~64歳との間には、やや大きめの差異が見受けられる。
また、6~12歳が4割ほどのみ、13~19歳も20歳以降と比べて少なめなのは、多くの人が自分の収入で端末を入手できないこと、そして保護者から端末の利用許可を受けていないことが想像される。もっとも幼少時においてはタブレット型端末の利用率が伸びており、細かなレベルでの世代交代が起きているのも分かる。
これをさらに過去の調査データを用いて、5年間の推移を示したのが次のグラフ。
2012年ではシニア層で揃って値を落としたため、高齢者のモバイルインターネット離れすら懸念された事案が生じたが、直後の2013年では揃って上昇が確認され、一安心といったところ。2014年では少々の下落が見受けられるが、これは誤差範囲だろう。
2015年から2016年にかけては、一部で横ばい、減退が見られるものの小規模な値動きに留まり、大よその層で増加を示している。特に6~12歳層と壮齢層の上昇ぶりが著しい。上昇率が穏やかなのはすでに天井感の強い若年層のみ。社会全般に、急速に携帯電話によるインターネット利用が進んだことを示唆している。
主要機種別にさまざまな切り口から
次に主要機種として従来型携帯電話とスマートフォン、そして上記「携帯電話」には該当しないものの、利用スタイル的には近しいポジションにあるタブレット型端末について、年齢階層別、経年の変化を確認していく。
まずは直近2016年の年齢階層別動向。若年層ではスマートフォンが従来型携帯電話を凌駕している。
今件は「保有」ではなく「インターネットの利用」であり、多分に保護者の端末を流用していると考えられるが、6~12歳の時点ですでに37.4%がスマートフォンを使ってインターネットにアクセスしている。これが13~19歳になると79.5%となり、8割にすら手が届く形となる。すでに従来型携帯電話は少数派でしかない。20代ではさらに増え、9割を超している。二十歳を過ぎればさすがに保護者の端末を流用する事例も少ないことから、少なく見積もっても9割はスマートフォン「所有者」と考えても良い。
一方、中堅層以降になると、特に60代以降はスマートフォンの利用率は大きく減る。70代でスマートフォンと従来型携帯電話の利用率が逆転していることから、60~70代がスマホ世代の境目と考えても良さそうだ。
タブレット型端末利用率は少々興味深い動きを示している。最多利用率は6~12歳。中堅層では無い。6~12歳では従来型携帯電話よりもタブレット型端末を使ったネットアクセスが多用されている、スマートフォンすら超えているのが実情。これは幼少時においてはスマートフォン同様にタブレット型端末が操作しやすく、また対応アプリケーションも数多く登場しているのが要因と考えられる。お絵かき帳やホワイトボード感覚で子供に使わせる事例も多々見られるようになった昨今の状況を、見事に裏付ける結果ではある。
次に示すのは過去6年間、2011年~2016年における、全体的なインターネット利用率。概況を示すものだが、これを見てもモバイル系インターネットの主流が、確実に従来型携帯電話からスマートフォンに移行する動きを示しているのが分かる。
従来型の減少と、スマートフォン・タブレット型端末の増加がほぼ同じタイミングで起きており、従来型からスマートフォンとタブレット型端末にシフトしているようすが分かる(今件は重複回答式のため、従来型携帯電話利用者がスマートフォンとタブレット型端末のいずれかのみにシフトするわけではなく、双方を利用している場合も多々ある)。
最後に各年齢階層別の前回年2015年から今回年の2016年における変移を算出したもの。各層のモバイル系インターネットの機種シフト具合が見えてくる。
従来型携帯電話は高齢層で大きな減退を示している。中堅層でもそれなりに減退は続いている。6~12歳と80歳以上では増加しているが、誤差か、あるいは需要にマッチしたがためだろう(6-12歳では防犯用として従来型携帯電話は大いに需要がある)。
スマートフォンの利用率の伸びは50代から70代にかけて大きい。かつて現役世代との間にあった格差を埋めるかのような伸び方である。若年層で伸び率が鈍いのは、天井に近づいたがための結果。
他方タブレット型端末は6~12歳で大きな伸び、11.7%ポイントもの伸長が見られる。2016年においてこの層で、スマートフォンすら超えた利用率を示しているのも、この伸びによるもの。他の調査でも似たような値動きが確認できるが、プライベート色が強く画面も小さなスマートフォンよりは、共用利用が半ば前提で画面も大きく、子供向けアプリも充実しているタブレット型端末の方が、保護者としても子供に貸し与えやすいのかもしれない。
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※通信利用動向調査
2016年11月~12月に世帯向けは都道府県及び都市規模を層化基準とした層化二段無作為抽出法で選ばれた、20歳以上の世帯主がいる世帯・構成員に、企業向けは公務を除く産業に属する常用雇用者規模100人以上の企業に対し、郵送・オンラインによる調査票の配布及び回収の形式によって行われている。有効回答数はそれぞれ1万7040世帯(4万4430人)、2032企業。調査票のうち約8割は回収率向上のために調査事項を限定した簡易調査票が用いられている。各種値には国勢調査や全国企業の産業や規模の分布に従った、ウェイトバックが行われている。