高齢者の自動車運転、日本は他国と比べて多いか少ないか(2019年公開版)
高齢化の進行と地域の過疎化に伴い、高齢者による自動車事故が社会的問題の一つとしてスポットライトを浴びている。生活の維持のためには行動範囲を広げる自動車などの移動手段は欠かせないが、心身の衰えに伴う判断ミス、走行中に不意の発症で運転不可能になる可能性は否定できず、そのリスクの体現化の一形態である交通事故が生じれば、本人だけでなく周囲の人まで被害を受けてしまう。今回は内閣府が2016年5月に発表した高齢者の生活と意識に関する国際比較調査(※)の最新版から、自らの体力を消費することなく移動先を決められる移動手段として、バイクやスクーター、そして自分で運転する自動車を取り上げ、その利用実情を確認する。
次に示すのは「ふだん、外出する時に何を利用するか」との複数回答の問いにおいて、選択肢として「徒歩」「自転車」「バイク・スクーター」「自分で運転する自動車」「家族などの運転する自動車」「バス・路面電車」「電車・地下鉄」「タクシー」「自分で操作する車椅子」「介助者が必要な車椅子」「その他」を用意した中で、冒頭にある通り「自らで移動経由や行先を細かく決められる」「移動の際に体力の消費を必要としない」「いつでも利用できる」の条件に合致した、「自分で運転する自動車」「バイク・スクーター」の回答率を抽出したもの。例えば日本では「自動車(自分で運転)」が51.9%とあるので、60歳以上の半数強は自分で運転する自動車を普段外出する際に利用していることになる。
なお今件ではシルバーカー、シニアカーと呼ばれている低速の電動式移動車両は、選択肢として用意されていない。「その他」が選ばれているものと考えられるが、法令上は歩行扱い。
どの国でもバイクやスクーターを利用する人はごく少数。運転時の安定性や運動能力の必要性などを考えると、自動車運転と比べて格段の難しさがあるため、バイクよりは難易度が低いスクーターでも利用する人はあまりいないのだろう。自動車ではアメリカ合衆国の81.5%がもっとも多く、次いでスウェーデンの64.7%、ドイツの61.8%が続く。日本の51.9%は実のところ今回調査国の中では一番低い。
これについて、各国の年齢階層別に見たのが次以降のグラフ。
全体値でも一番値が高かった日本だが、(海外と比べて、ではあるが)高齢でも少なからぬ人が利用しているのが分かる。アメリカ合衆国の85歳以上・3.9%はイレギュラーの感があり、それを除けば日本の高さが際立っていることは一目瞭然。特に70歳以降の利用者の多さは、後述する「自動車(自分で運転)」と合わせ見ると、自動車の代替手段的な形で利用している人が多分にいるのではと思わせる。
もっとも、一番値の高い日本ですら数%でしかないので、誤差の範囲と解釈すれば、それまでなのだが。あるいは上記で言及したシニアカーの類を誤解釈して回答している人がいる可能性は否定できない。
続いて自分で運転する自動車の回答率。
自分で運転する自動車の割合は、当然ながらどの国でも年を取るほど減少する。年を取るに連れて心身ともに衰え、自動車の運転に耐えられなくなる(・耐えられないと周囲が判断して止めさせる)からだ。
他方、各年齢階層の値を見ると、ベースとなる60代前半の値は日本が低く、ドイツとスウェーデンはやや高めだが減り方は類似している。一方で、アメリカ合衆国は60代前半で8割強の人が用い、約8割の値は80代前半まで維持されている。さらに85歳以上でも約6割の人が自分で自動車を運転すると回答している。同国において自動車は生活必需品となっている実態が容易に理解できよう。
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※高齢者の生活と意識に関する国際比較調査
今調査は5年毎に行われているもので、最新分は2015年9月から12月にかけて日本、アメリカ合衆国、ドイツ、スウェーデンにおいて、60歳以上の男女(老人ホームなどの施設入所者は除く)に対して調査員による個別面接聴取方式によって行われたもので、有効回答数は各国とも1000件強。それぞれ男女別・年齢階層別・地域・都市規模などを基準にウェイトバックが行われている。
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