「日本の大陸進出の野心」が怖い…韓国与党の主張に疑問
韓国紙・ハンギョレは4日、「『韓日海底トンネル』にとんでもない『イデオロギー論』」と題した記事を掲載し、次のように伝えた。
〈野党「国民の力」が、4月7日の再選・補欠選挙にともない行われる釜山市長選挙を控え打ち出した「加徳島・九州海底トンネル」の公約に対し、突然、親日議論が広がった。韓国と日本の間に海底トンネルを作れば日本に一方的に有利であるため、「親日公約」だというのが共に民主党の主張だ〉
「日本に勝てない」
釜山市長選では以前から、加徳島の新空港構想が争点のひとつになっており、与党・共に民主党は積極推進の立場だ。同構想は経済合理性に関して疑問符が付けられていることもあり、保守野党・国民の力の指導部は最近まで立場を決めかねていたのだが、選挙が迫り、地元受けをねらって賛成を決めた。ただ、「新空港ひとつで釜山の経済がよみがえるわけではない」と主張してきたこととの整合性を保つため、日韓を海底トンネルでつなぐという数十年前からあるアイデアを引っ張り出してきてくっつけたのだ。
問題は、これに対する与党の反応だ。共に民主党の崔仁昊(チェ・イノ)首席報道官は1日、記者団に対し「日本の大陸進出の野心に高速道路を架けてやるようなもの」と発言。翌日発表した書面による談話でも、海底トンネル構想を「親日的な議題」だと主張した。
公正を期して言うならば、崔報道官の批判の大部分は経済的な観点からのものだ。要約すると「莫大な費用がかかる海底トンネル構想は実現性が乏しいし、日本側からの提案もない。できたとしても利は日本側の方が大きく、釜山が得るものは少ない」という趣旨である。
こういった論争は、韓国国内で大いにやれば良いだろう。日本もまた、こういった話に関心を持つか持たないかは自国の都合による。
しかしどうして、このような話に「日本の大陸進出の野心」などという主張を混ぜ、ネガティブな意味で「親日的な議題」などという言葉を使うのか。韓国の政党が反日世論を選挙利用しているという見方を裏付けるものと言えるが、その範囲で収まっていればまだマシかもしれない。
そもそも、「日本の大陸進出の野心」とは何を思い浮かべて言っているのか。経済的な大陸進出ならば、日本はとっくの昔にやっているし、それが「問題だ」と言う国は韓国を含めひとつもない。崔報道官はもしかして、日本が軍事的な覇権を求めて「大陸進出」しようとしていると考えているのか。まさか、韓国与党の首席報道官ともあろう人物が、そんなはずはなかろう。
しかし、不安にさせられる要素があるのも事実だ。文在寅政権は海軍の軽空母導入を進めているが、これには「なぜ我が国に空母が必要なんだ」という疑問の声が韓国国内からも絶えない。推進派は、先にいずも型護衛艦の空母化を決めた日本への対抗心を隠そうともせず、「持ったとしても、わが国の空母はぜったい日本に勝てない」という専門家の批判にも耳を貸さない。
(参考記事:「韓国の空母は日本にぜったい勝てない」韓国専門家も断言)
文在寅政権は最近、日韓関係の改善を目指す姿勢をアピールしているが、与党の首席報道官が今回のような言動をしていては、真意を疑われざるを得ない。
ちなみに、ハンギョレは政権に近い進歩系メディアだが、冒頭の記事は与党に対する批判調の内容になっている。身内ですら「おかしい」と問題提起する崔報道官の発言を、韓国の政権・与党は正すべきではないのか。