広がる「朝外食」文化、コロナで苦境のコンビニも活用を…
コンビニ各社の7月発表値によると、既存店売上高の前年同月比は、セブン-イレブン5・1%減、ファミリーマート10・8%減、ローソン8・9%減と、3大チェーンいずれも前年を下回る結果だった。記録的な大雨、そしてかねてよりのコロナ禍がその理由とされている。
こうした状況を打破する策として、「朝食」需要の取り組みを提案してみたい。
◆5年連続で伸びている「朝外食」市場
いま、飲食業界では「朝外食」の展開が積極的に行われている。もともと、外食・中食市場としては、2014年の9048億円から19年には1兆448億円と、5年連続で売上伸長が伸びてはいた(エヌビーディ・ジャパンCRESTの調査より)。そこに見舞われたコロナ禍で、夜の営業自粛を求められた飲食店が、活路を見出したのが「朝」というわけだ。
台湾や東南アジアの国々では朝食を外でとる食文化があるのに比べ、日本ではあまり一般的ではなかった。喫茶モーニング文化のある名古屋くらいだったのではないだろうか。それが今や牛丼チェーン店、そしてファーストファード店の朝メニューの充実によって、少しずつ、朝食を外で食べるという動きが定着しつつある。個人店もこの動きに続いているようだ。コロナ禍で夜の会食を控えるようになったビジネスパーソンも、夜型から朝型へのシフトが進みつつある。
◆「朝外食」のメリット
朝外食のメリットとしては、ポイントは2つある。客側、店側ふたつの観点から考えてみると、
(1)独身や共働き夫婦の家庭、あるいは高齢世帯では、量を多く食べなくて済む「朝食」に割く時間や食材のムダを省ける
(2)店側に「朝外食」参入の障壁が低い
という点が挙げられる。(1)に関しては、割とイメージしやすいのではないだろうか。忙しい朝に、焼き魚にご飯、味噌汁……といった「古き良き」日本の朝食を用意することは、そう簡単ではない。食卓に人数が揃うのであれば話は別だが、少人数のために朝食用に食材を揃えるのだって手間だ。そういう世帯では、朝食を外で済ますのは手軽である。牛丼チェーンで朝食を済ませている若いビジネスパーソン、あるいは喫茶チェーンでコーヒーとトーストで軽く済ませるお年寄りの姿は、もはや日常の光景になりつつある。
コロナ禍のこの状況を鑑みると、重要なのは(2)の点である。夜の営業が容易でないことで朝に、というわけだが、朝のメニューはそれほど手間がかからない。ランチやディナーのメニューのようにバリエーションが多くなくていいし、トーストやゆで卵、簡単なサラダと、調理に手間のかからない品でモーニングはまかなえる。メニューの豊富さが魅力で、モーニング文化発祥の名古屋から全国にひろまる「コメダ珈琲」にしても、モーニングのメニューは、トーストにプラスしてのゆで卵or卵ペーストor小倉あんというのが軸で、サイドとしてミニサラダとコールスロー、ヨーグルトがあるくらい。誤解を恐れずにいえば、それほど力をいれなくていい。
◆コンビニは…
そこでコンビニである。実はコンビニも、これまで「朝」に力を入れていた。たとえばファミリーマートでは、今年5月に「朝ファミマセール」として、ファミマカフェとパンをセットで買うと40円引きになるというキャンペーンをやっていたし、セブン-イレブンも、定番のおにぎり100円セールを「朝なら2個で200円セール」の形で実施したりと、朝食需要を開拓していたのだ。ローソンも同様のお得な朝キャンペーンを今年5月までやっていた。
ところが私が調べたかぎり、ここ1ヵ月以内で、明確に「朝」を狙って打たれたキャンペーンは、8月24日まで大阪と和歌山限定で実施されていた「朝セブン」くらいしかない(こちらは、セブンカフェと対象のパン10種いずれか1品のセットが200円(税別)になるというもの)。たまたまキャンペーン期間の「合間」のタイミングなのだと言われればそれまでだが、コロナで顧客の購買行動が変わりつつある時期、各社とも朝は「探り探り」の側面があるのではないか。
お昼のランチや夜のディナーと違って、朝食は比較的、食べる時間が人によってバラツキがある。朝に向けたキャンペーンを展開しても、店内に人が殺到して「密」になる事態も少ないはずだ。感染防止対策で閉鎖されていたイートインスペースも、ひと頃よりは開放されてきたから、軽減税率対象外ではあるがコンビニでの「朝外食」も導入しやすいだろう。なにより、飲食店が続々「朝」に参入している状況を鑑みると、朝客がそちらに奪われてしまう恐れがある。コンビニ業界もうかうかしていられないのだ。
朝食に限らず、我々の生活、そして経済はコロナによって変化を強いられている。うまく対応して、この難局を乗り越えていきたいと思う次第だ。