継続的に減少…新聞、週刊誌や雑誌、書籍の支出金額の推移をさぐる(2020年公開版)
インターネットという新しいメディアの登場で、紙媒体のビジネスは一様に厳しいとの話を聞く。紙媒体はどれほど買われているのか、世帯単位の実情の推移を、総務省統計局による家計調査の結果(年次分は2019年分が最新)から確認する。
次に示すのは総世帯(すべての世帯。単身世帯+二人以上世帯)の家計調査における書籍・他の印刷物(紙媒体全般)の詳細項目の、世帯購入頻度(※)と支出金額の動向。公開データが取得できる2002年分以降のものについて、時系列で再整理している。
新聞の世帯購入頻度は2002年の時点で100%を超えていた。自宅に投函してもらうタイプは「1か月分の契約」で1購入と計算するので、すべての世帯が定期購読しているのに加え、スタンドや駅売店で購入して家計にカウントした人も相当数いたことになる。それが2019年には73.0%。31.6%ポイントの下落。2012年以降下落傾向が一時的にストップし、2013年から2014年にかけては上昇の動きすら見られるが、これは2011年の震災で新聞の存在意義が見直されたことに加え、新学習指導要領において新聞が教材の選択肢の一つとして挙げられたことが要因として考えられる。しかしながらそれらの効用も、2015年以降は消え失せてしまったようだ。
書籍はやや減少具合がゆるやかだが、減っていることに違いは無い。それゆえに2017年の前年比増の動きは稀有であり、注目したいところではあった。そして2019年では前年比で大きく増加する動きを示した。これがイレギュラーなものなのか、それとも書籍の持ち直しの動きなのか、2020年以降の動向に注目したい。
今回のグラフからは、いわゆる「メディアのターニングポイント」とされる2005年前後(携帯電話、インターネットの世間一般への普及が始まった時期)より前、少なくとも今回データが取得できた2002年時点から、主要紙媒体の購入性向の減少が起きている事実、そして雑誌・週刊誌や書籍は多分に景気変動にも影響を受けやすい実態を知ることができる。大勢としては二人以上世帯の傾向と変わりがない。
また直近となる2019年分も含めたここ数年の動向を見ると、購入頻度の視点で雑誌・週刊誌と書籍とが競り合い、差が開いた2011年以降、その動きが継続して拡大しているのが分かる。書籍よりも雑誌・週刊誌を買う人が少なくなった初めての年は2008年、そして2011年以降は連続した形となる。タイミング的には震災がきっかけで、現状の低迷感に拍車がかかった雰囲気ではある。無論、震災が直接影響したか否かの証拠は無く、単にタイミングが一致した可能性も否定はできない。
雑誌・週刊誌の急速な低迷ぶりは、「すき間時間向けの媒体」「読み捨て感が強い」との観点でライバルとなる、モバイル端末、とりわけスマートフォンの普及が加速度的に進んでいるのも一因と考えられる。書籍は何度と無く読み返し、読み終えた後も手元に残しておく場合が多い。しかし雑誌は一度や二度の読み返しで終わり、書籍のように長期間保存する事例は少ない。いわゆる「読みっぱなし」の時間消費との観点ではより注力度の高い、そして総じて低コストなモバイル端末にその座を奪われた形である。
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※世帯購入頻度
世帯購入頻度とは世帯単位での月あたりの購入頻度。例えば特定の世帯において該当期間中に誰かが2回雑誌を購入すれば、その世帯の期間中の世帯購入頻度は200%になる。非購入世帯も含めての計算であることに注意。
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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。
(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。