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次の米利上げは6月か

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

FRBのイエレン議長はブラッド・シャーマン下院議員に宛てた書簡で、「いつか極めて深刻な事態が起きた場合にマイナス金利を使う可能性について完全には排除しないものの、政策当局は米国でこの手段を使う前に、意図せぬ結果が生じないかなどさまざまな問題を検討する必要があるだろう」と指摘した(WSJの記事より引用)。

イエレン議長はマイナス金利政策がひとつの政策手段であることは認識し、もしものときには使用する可能性を示したが、欧州や日本でのマイナス金利政策に対する批判等も意識し、かなり慎重な姿勢であることも示した格好である。

この書簡では、米国の景気は改善し、インフレ率はFRBが目標とする2%にいずれ戻るとの見通しを示した。そうであれば非伝統的な金融政策が必要ないことも指摘していた。この書簡の内容を見る限り、慎重ながらも利上げスタンスを維持する姿勢を見せたと言える。

利上げに向けたFRBの姿勢に変化がないことは、12日の3人の連銀総裁の発言からもうかがうことができる。

ボストン連銀のローゼングレン総裁はニューハンプシャー州コンコードで講演し、「最新の経済データが今後も、労働市場の緩やかな改善および目標に近づきつつあるインフレ率という認識と矛盾しなければ、金融当局は政策金利の緩やかなペースでの正常化の準備を整えるべきだ」と述べた(ロイター)。

カンザスシティー連銀のジョージ総裁もニューメキシコ州アルバカーキで、「金利変動に敏感なセクターが低金利への反応として過剰な債務を負って急成長し、その後に混乱を伴いながら巻き戻すことになりかねない」と指摘した(ロイター)。

クリーブランド連銀のメスター総裁もドイツで開かれた金融政策に関する会議の講演で、「かなり正確な予測モデルは存在しない」とし、これがFRBの手足を縛ることがあってはならないと述べていた。つまり見通しをめぐるリスクが金融政策決定を阻むべきではないとの考えを示した(ロイター)。

この三人の連銀総裁はFOMCの投票権を持っているが、投票権に関わらずFOMCメンバーが現在のイエレン議長の利上げに向けたスタンスに賛同しているであろうことが伺える。

そうであるならばなぜ3月のFOMCで利上げが決定されなかったのかとの疑問もあるかもしれない。こればかりは想像を働かせるほかはないが、年初からの原油安やその要因ともなった中国の景気減速によるマーケットでのリスク回避の動きにより慎重になった可能性はある。しかし、昨年12月の利上げを決定した際にも予測の数値に現れていたとはいえ年4回までの利上げペースは想定していなかった可能性もありうる。

もし年2回程度という認識が前提であれば、よほどの事態が発生しない限り、やはりターゲットは6月のFOMCに置いていると私は見ている。ただし、その後の利上げについては米大統領選挙の行方も影響を与える可能性がある。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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