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9月末の日本国債の保有者

久保田博幸金融アナリスト
(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

 日銀は12月21日に資金循環統計(2020年7~9月期速報値)を発表した。これによると個人の金融資産は9月末時点で約1901兆円となり、6月末の約1884兆円から増加し、過去最高となった。

 個人の金融資産の内訳は、現金・預金が前年比で4.9%増の約1034兆円となり、これは過去最高となった。株式等は同1.8%減の約181兆円、投資信託は同1.6%増の約72兆円となっていた。

 この資金循環統計を基に国債(短期債除く)の保有者別の内訳を算出してみた。

 残高トップの日銀の国債保有残高は497兆390億円、48.0%のシェアとなった。前期比(速報値)からは6兆6955億円もの増加となる。残高2位の保険・年金基金は249兆4533億円(24.1%)、1兆4294億円増。残高3位は預金取扱機関(都銀や地銀など)で128兆4436億円(12.4%)、1952億円増。残高4位が海外投資家で75兆1298億円(7.3%)、1兆1364億円減。残高5位が公的年金の35兆4441億円(3.4%)、2兆1110億円減。残高6位が家計の13兆4635億円(1.3%)、4187億円減。その他が36兆171億円(3.5%)、3兆3579億円増となっていた。

 2020年6月末に比べ国債(短期債除く)の残高は8兆119億円増の1034兆9904億円となった。(こちらの国債残高は時価ベース)。

 6月末に比べて日銀と、保険・年金、その他が残高を増加させたが、公的年金や海外が残高を減少せた。預金取扱機関は微増。

 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受けて、3月末にかけて株式市場は急落した。キャッシュ化が意識されて、3月に日本国債も大きく売られるなど波乱含みの様相となった。4~6月期のGDPは、緊急事態宣言による人や物の移動の制限などから、過去最大級の落ち込みとなっていた。原油先物価格は4月に一時マイナスになるなどしており、物価も低迷した。しかし、その後、株価や原油価格は反発基調となった。

 7月からは第二次補正予算をうけて、国債発行額が大きく増額された。しかし、債券市場ではこれによって売られるようなことはなかった。景気の悪化や物価の低迷による金利の低下圧力もあるが、日銀の国債買い入れと長期金利コントロールも意識されたとみられる。ただし、10年債利回りはゼロ%が下値抵抗線となっていた。

 短期債を含めた国債全体の数字でみると9月末の残高は約1201兆円。このうち日銀が約542兆円で45.1%のシェアに。海外勢の残高は約152兆円と短期債を含めると国債全体の12.6%のシェアとなっていた。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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