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ユーロ2024決勝。スペインに敗れたイングランドを見て想起したのは10数年前のスペインという皮肉

杉山茂樹スポーツライター
(写真:ムツ・カワモリ/アフロ)

 決勝でスペインがイングランドを2-1で下し、通算4度目の優勝を飾ったユーロ2024。スペインの強さは7戦全勝という数字に現れていた。準々決勝のドイツ戦は延長戦を含む120分を戦った末の勝利だったが、総合的に見て決勝までの6試合を3勝1PK勝ち2分で勝ち上がってきたイングランドを上回っていたことは確かだった。決勝戦の試合内容を踏まえても妥当な結果と言っていいだろう。

 スペインとイングランド。それぞれの違いは一言でいえば左ウイングの有無になる。直接対峙することでそれはより鮮明になった。4-2-3-1と4-3-3の中間のようなスペインが、両ウイングにニコ・ウイリアムズ(左)とラミン・ヤマル(右)を配したのに対し、4-2-3-1のイングランドは3の右を事実上、空けて戦った。

 相手ボールに転じれば、フィル・フォーデンがそこをカバーしたが、マイボールになると同選手は居心地の悪さに堪えかねるように持ち場を離れ中央付近に移動した。

 右ウイングを務めたブカヨ・サカは対照的だ。こちらは居心地よさそうにプレーする。縦突破も内への切れ込みもバランスよくトライする。フォーデンはつまり推進力、突破力でサカに劣ったことになる。サカにはアタッカーという言葉が相応しいが、フォーデンはMFと呼んだ方がしっくりきた。イングランドの4-2-3-1は左右非対称な関係にあったのだ。

 もっともイングランドは、準々決勝のスイス戦では5-2-3で戦う相手に合わせ3-4-2-1で、続く準決勝のオランダ戦も、その流れで同様の布陣で戦っている。フォーデンは2シャドーの一角、サカは右のウイングバックでプレーしている。

 フォーデンは気持ち良さげにプレーしたがイングランドは苦戦。左からの攻撃は滞った。決勝戦の対スペイン戦はどうするのか。3-4-2-1なのか、4-2-3-1なのか注目されたが、先述の通りイングランドのガレス・サウスゲイト監督は4-2-3-1を選択した。

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スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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