複数誌で大きく部数が落ち込む…ゲーム・エンタメ系雑誌部数動向(2022年10~12月)
部数公開誌は4誌のみ継続中…部数現状
インターネットのインフラ化に伴い速報性が重要視され、ゲーム関連をはじめとしたエンタメ情報の提供媒体として、紙媒体の専門誌の立ち位置が危ぶまれる昨今。ゲームやエンタメ専門誌の部数動向を、日本雑誌協会が四半期ベースで発表している印刷証明付き部数(※)から確認する。
まずは最新値にあたる2022年10~12月期分と、そしてその直前期にあたる2022年7~9月期における印刷証明付き部数をグラフ化し、現状を確認する。
ゲーム・エンタメ系雑誌の中で最大部数を示しているのは「Vジャンプ」で14.5万部。このポジションは前期から変わりなし。
現在印刷証明付き部数を公表しているゲーム・エンタメ系雑誌は、今期でも今グラフに表示されている4誌にとどまっている。すでに公開サイトにおけるジャンル区分で「パソコン・コンピュータ誌」は皆無(ジャンル区分そのものは今なお存在している)。
精査対象を足そうにも、類似の主旨を持つ雑誌が(印刷証明付き部数の公開誌では)存在しないのが悩みの種。類似・同一ジャンルの雑誌としては例えば「週刊ファミ通」「電撃Nintendo」「Nintendo DREAM」「MC☆あくしず」などが挙げられるが、印刷証明付き部数は非公開なのが実情ではある。
前四半期からの変化を確認
次に四半期、つまり直近3か月間で生じた印刷数の変化を求め、状況の確認を行う。季節による変化が考慮されないため、季節変動の影響を受けるが、短期間における部数変化を見極めるには一番の値となる。
ゲーム・エンタメ系雑誌において前期比でプラスを示したのは2誌「PASH!」「Vジャンプ」で、両誌とも誤差領域(プラスマイナス5%)内のプラス幅となっている。一方マイナスを示したのは「声優グランプリ」「アニメージュ」で、「声優グランプリ」は誤差領域を超えたマイナス幅。
ゲーム・エンタメ系雑誌では最大の部数を誇る「Vジャンプ」は特集や付録で大きく上下感を見せるものの、長期的には部数減少の傾向にある。話題性のある付録で一時的な部数の引き上げを果たしても、それが継続するには至らないパターンが続いている。
ゲームそのもののプレイヤーが一定数存在することが前提となるが、ゲームと密接な関係にある付録を常につけることで雑誌の集客力を高めさせるのも、雑誌販売の一スタイルとして認識すべき方法論であり、「Vジャンプ」の必勝方程式として定着している。
しかし長期的な部数動向を見るに、その方程式が必勝とは言い難い状況なのは否定できない。昨今では15万部が底のような部数動向となっていたが、ここ数期ではその底すら抜けてしまっている。
なお「Vジャンプ」では電子雑誌方式に関しては、紙媒体誌を購入した人限定で閲覧できる仕組み「購入者特典」の形での提供のため、電子書籍版のセールスが伸びたので今件値(紙媒体として印刷された部数)が減少しているとの解釈は難しい。販売スタイルは今でも原則として紙媒体の雑誌のみである。
他方、今期におけるゲーム・エンタメ系雑誌の前期比で大きなマイナス幅を示したのが「声優グランプリ」。
時折大幅な増加を示す部数動向だが、これは注目を集める付録によるところが大きい。実際、2022年1~3月期では、付録声優名鑑や麻倉もも氏のソロ初表紙で大きく部数を伸ばしている。今期は大きなマイナス幅となってしまったが、前期で3年ぶりのアルバムリリースをする水瀬いのり氏の表紙・巻頭特集号や、『ラブライブ!スーパースター!!』Liella!の表紙・巻頭特集号など、魅力的な号の多さから部数が底上げされていたため、その反動が生じてしまったのだろう。
プラスは1誌の前年同期比
続いて前年同期比を算出し、状況確認を行う。年単位の動きのため前四半期推移と比べれば長期間の動きの精査となるが、季節変動を気にせず、より正確な雑誌のすう勢を確認できる。
前年同期比ではプラス誌は1誌「Vジャンプ」のみ。残りはすべてマイナスで、しかも3誌すべてが誤差領域を超えたマイナス幅を示している。
誤差領域を超えた下げ幅だが1ケタ台%にとどまった「PASH!」の部数動向は次の通り。
「PASH!」は特集記事や付録による部数への影響が大きく、部数変動が他誌と比べると大きくなる傾向がある。例えば2016年1~3月期は「おそ松さん」特需、2016年10~12月期は「ユーリ!!! on ICE」特需によるもの。2018年ぐらいからは2万部を底とする部数動向を示しているが、今期ではその底値は上回る結果となった。しかしその底値を割り込みかねない部数動向が続いているのは否定できない。
日本国内の家庭用ゲーム機業界の市場は縮小を続けている。少なくとも利用者人口は堅調な動向にあるスマートフォンアプリ向けの紙媒体専門誌のアプローチも、情報の公知特性を考慮するとビジネス的には難しい。新しい付加価値の創生、アイディアの想起など、あらゆる手立てを講じて有効策を見出さない限り、今後も当ジャンルの低迷は続くことだろう。
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※印刷証明付き部数
該当四半期に発刊された雑誌の、1号あたりの平均印刷部数。「この部数だけ確かに刷りました」といった印刷証明付きのものであり、雑誌社側の公称部数や公表販売部数ではない。売れ残り、返本されたものも含む。
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