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IMFは1980年以降で最大規模の世界経済の回復を予測

久保田博幸金融アナリスト
IMFのゲオルギエワ専務理事(写真:ロイター/アフロ)

 国際通貨基金(IMF)は、6日に改定した世界経済見通しを発表し、このなかで2021年の世界の経済成長率見通しを6.0%とした。1月に今年の世界成長率予測を5.5%に引き上げており、そこから0.5%の上方修正となる。

「IMF世界経済見通し」IMFの日本語サイトより https://www.imf.org/ja/Publications/WEO/Issues/2021/03/23/world-economic-outlook-april-2021

 もし6%の経済成長が実現すれば現行のIMF統計で遡れる1980年以降で最高となる。

 IMFのレポートの見通しによると、「この上方修正は、一部の経済大国における追加の財政支援や、年後半にワクチン接種効果による景気回復が期待されること、移動量の低迷への適応が続くことを反映したものです。」とある。

 一部の経済大国とは、特に米国のバイデン政権を意識したものであろう。ワクチン接種に関しては、日本はさておき、米政権は19日までに全成人をワクチン接種対象にするよう州政府に要請するなど、国によってはかなり普及が進み、それが経済活動の再開に直結しつつある。

 国別でみると、先進国ではトータルで5.1%。国別で、米国とスペインが6.4%と高い。スペインのサンチェス首相は8月末までに人口の約70%がワクチン接種を完了するとの見通しを表明している。

 続いてフランスの5.8%、英国の5.3%、カナダの5.0%と続く。日本は3.3%と先進国のなかでは最下位となり、次はドイツの3.6%となっている。

 日本での感染率等は他の国と比べ低いものの、ワクチン接種は進まず、景気そのものの回復も鈍い。ドイツでは、ワクチン接種が英国やイスラエル、米国に遅れを取っていることに加え、数か月に及ぶ規制にもかかわらず新型コロナウイルスの感染が拡大している。これが経済回復の重しとなっているようである。

 新興国と発展途上国では、トータルで6.7%と先進国より高い。国別ではインドの12.5%、中国の8.4%が目立つ。インド政府は夏までに3億人にワクチンを接種する計画となっている。中国もワクチンの接種を強化している。

 IMFのレポートでは、「パンデミックの今後の展開や、ワクチンが牽引する経済活動の正常化が進むまでのつなぎとなる政策支援の有効性、金融環境の動向に関連して、予測を取り巻く不確実性は大きなものとなっています」ともある。

 しかし、大規模な経済対策や非常時対応の中央銀行による金融政策は、経済が正常化に向かえば、より強力に経済に作用する可能性がある。経済の正常化が当然、優先され、経済政策や金融政策の「正常化」は遅れる可能性も高い。その分、経済成長は記録的なものとなる可能性もあり、それは物価にも影響を与えよう。それに応じて長期金利には上昇余地が生まれることになる。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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