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昨年よりも抑制されている北朝鮮の3月のミサイル発射

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
北朝鮮の弾道ミサイル(朝鮮中央テレビから)

 北朝鮮は今朝7時44分頃から黄海北道・サンウォン一帯から日本海に向けミサイルを数発発射した。北朝鮮のミサイル発射は先月14日に発射された地対艦巡航ミサイル以来33日ぶりである。

 ミサイル部隊による軍事訓練の一環だとするならば、午後にもあるかもしれないが、仮に金正恩(キム・ジョンウン)総書記の立ち会っているならば、午前中で終わる可能性が高い。金総書記が午前と午後に立ち会うのは稀だからである。

 北朝鮮はミサイルを発射するまでは「侵略戦争」の準備と警戒していた今年の米韓合同軍事演習「フリーダムシールド(自由の盾)」に前線部隊の射撃訓練、大連合部隊(軍団)の砲撃訓練、戦車部隊の演習で対抗していた。

 普通ならば、米韓合同軍事訓練が3月14日に終了したので北朝鮮も矛を収めてもおかしくなかった。また、米軍が昨年とは異なり、今年は米原子力空母をはじめ原子力潜水艦、迎撃ミサイル・システムを備えたイージス艦、「B-1B」と「Bー52」などの核戦略爆撃機などを投入しなかったので北朝鮮もミサイル発射を自制してもよかったはずだ。

 しかし、今年は金総書記が軍事パレードに登場する部隊の訓練を順に視察していることから軍事パレードの最後に登場するミサイル戦略部隊のミサイル発射訓練も演習のフィナーレとして行う可能性も想定されていた。

 それでも今年3月の北朝鮮のミサイル発射は昨年に比べればおとなしい方だ。

 昨年の米韓合同軍事演習は3月13日から23日まで行われたが、北朝鮮は演習が始まる4日前(9日)から「戦争の主導権を握ることにある」(労働新聞)として6発の短距離ミサイルを平安南道江西郡台城里にある貯水池の人工の島から同時発射し、演習前日(12日)には日本海に面した咸鏡北道・新浦一帯から戦略巡航ミサイル(SLCM)2発を潜水艦から発射していた。飛距離は約1500kmで、「F-22」戦闘機が駐屯している沖縄嘉手納基地もターゲットとされていた。

 米韓合同軍事演習の初日(14日)には西部戦線で任務を遂行している人民軍ミサイル部隊がミサイル試験射撃の一環として黄海南道長淵付近から戦術誘導ミサイルを2発発射し、16日には大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星17」を1発発射してみせた。

 「火星17」は飛行時間約69分、高度6045km、飛行距離1000kmで、北海道の渡島大島の西方約250kmのEEZ外に落下した。Jアラートが鳴ったので記憶に新しい。

 さらに19日にも東倉里から日本海に向け弾道ミサイルを1発発射したが、「800km射程に設定された朝鮮東海上の目標上空800mで正確に空中爆発した」(朝鮮中央通信)とされるこのミサイルについて北朝鮮は「敵の主要対象に対する核打撃を模擬した発射訓練である」と発表していた。

 それ以降も22日には巡航ミサイルを4発発射し、23日にも新型水中攻撃型兵器(核無人水中攻撃艇=ヘイル)の発射実験を行い、米韓合同軍事演習が終了したにもかかわらず25日から27日にかけて再度「ヘイル」の発射実験を行い、さらに27日には午前7時47分と7時57分に日本海に向け弾道ミサイルを2発発射し、3月の軍事演習を終了していた。

 ミサイルの性能向上のための発射や「年内に新たに軍事偵察衛星を3基保有する」(金総書記)と宣言している軍事偵察衛星の発射などは早ければ、来月にも再開される見通しだが、とりあえず明日(19日)北朝鮮の男子サッカー選手が北中米W杯出場権をかけ日本と対戦するため来日するので北朝鮮のミサイル発射は今日1日で終了するのではないかと予想される。

 北朝鮮はU-20の女子サッカー選手がウズベキスタンで行われてたアジアカップで日本を破って優勝したことを速報で伝え、また昨日は準決勝で「第一の敵」と定めた韓国に3-0で勝った試合を録画中継していたことから26日に実に13年ぶり意平壌で行われる日本戦が終わるまでは静かにしているのではないだろうか。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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