東南アジアやハワイがLCCでもっと行きやすくなる。LCCの国際線中距離マーケットの今後は?
航空業界の中で、今注目を集めているマーケットがLCC(格安航空会社)の中距離国際線。これまでのLCCの多くは、短距離路線を小型機で就航するスタイルが中心であったが、最近では日本各地からの東南アジア、関西国際空港からのハワイ直行便など中距離国際線の新規就航や増便が相次いでおり、その流れは今後更に加速する。
日本にはエアアジアX、スクート、ジェットスターが中距離国際線として乗り入れ
日本に就航する中距離国際線のLCCでは現在、マレーシアなど東南アジア各地を本拠地とするエアアジアグループ、シンガポールを本拠地とするシンガポール航空が出資のスクートが日本路線に積極的である。また、オーストラリアのジェットスターも日本からのオーストラリア便(成田~ケアンズ、成田~ゴールドコースト、関西~ケアンズ)を運航している。
キャンペーン運賃では、東南アジアやハワイへ往復2万円を切ることもあり、日本人の海外渡航だけでなく、訪日外国人(インバウンド)の増加にも貢献している。
最大便数を誇るエアアジアグループの中距離路線は「エアアジアX(エックス)」というブランド名で運航しており、日本にはマレーシア拠点の「エアアジアX」、タイ拠点の「タイ・エアアジアX」、インドネシア拠点の「インドネシア・エアアジアX」の3航空会社が乗り入れている。
2010年12月にエアアジアXが羽田~クアラルンプール線に就航したのをスタートに、クアラルンプール線やバンコク線などでネットワークを拡大し、昨年5月には成田~バリ便、6月には関西~ホノルル線にも就航した。今年は、3月25日から成田~バンコク線が1日2往復から3往復に増便され、成田~ジャカルタ線が5月に新規就航する。就航路線は以下の通りとなっている。
■エアアジアX 日本路線
羽田~クアラルンプール(1日1往復)
関西~クアラルンプール(週11往復)
関西~ホノルル(週4往復)
新千歳~クアラルンプール(週5往復)
■タイ・エアアジアX 日本路線 ※バンコクの発着はドンムアン空港
成田~バンコク(1日2往復、3月25日より3往復に増便)
関西~バンコク(1日2往復)
新千歳~バンコク(4月11日より1日1往復で再就航)
■インドネシア・エアアジアX 日本路線
成田~デンパサール(バリ島)(1日1往復)
成田~ジャカルタ(5月2日より1日1往復で新規就航)
また、シンガポール航空グループのLCC「スクート」は、2012年10月に成田~台北(桃園)~シンガポール線で日本路線に就航し、その後バンコク線にも就航し、昨年12月には、エアアジアXに続いて、関西~ホノルル線にも就航した。成田からはシンガポール行き(バンコクもしくは台北経由)、関西からシンガポール(一部、バンコクもしくは高雄経由)、ホノルル、高雄、バンコクの4都市に就航しているほか、新千歳からの便もある。
■スクート 日本路線
成田~台北(桃園)~シンガポール(1日1往復)
成田~バンコク(ドンムアン)~シンガポール(1日1往復)
関西~シンガポール(週4往復)
関西~バンコク(ドンムアン)~シンガポール(週3往復)
関西~高雄~シンガポール(週3往復)
関西~ホノルル(週4往復)
新千歳~台北(桃園)~シンガポール(週3往復)
※冬季期間には新千歳~シンガポールの直行便も運航
上記だけでもかなり便数が就航しているが、1便あたりの座席数も多いのも国際線中距離LCCの強みでもある。
エアアジアXでは、全便をエアバスA330-300型機で運航しており、エコノミークラス365席・ビジネスクラス相当のプレミアム・フラットベッド12席の合計377席となっている。スクートはボーイング787-8と787-9を日本路線には投入している。機材によっても座席数が若干異なるが、ボーイング787-8型機ではエコノミークラス311席・ビジネスクラス「スクートビズ」18席の329席となっている。
タイ・エアアジアXは、5月に成田~バンコク線を1日3往復に増便で、スクートと合わせて1日1400席以上に
両社ともに300席以上の座席数になっており、例えば、成田~バンコク線だと3月25日以降タイ・エアアジアXが1日3往復に増便され、スクートが1日1往復しているので、LCCだけで片道あたり1400席以上の提供座席数となる。また、中距離のリゾート路線では、昨年成田~バリ(デンパサール)線と関西~ホノルル線が就航したことによって、航空券の価格が下がり、週末を使って2~3泊で訪れる人も増えている。
ANAやJALなどのフルサービスキャリアの大型機(ボーイング777)では、ファーストクラスやビジネスクラスを設定し、座席のスペースにもゆとりを持たせていることで250席~270席程度となっていることを考えると、300席以上の座席数の便が就航することのインパクトは大きい。
ANAグループLCCも2020年を目処にアジアへの国際線中距離路線に参入へ
日本国内のLCC各社では、A320型機を中心とした小型機しか保有しておらず、距離が長い路線としては成田~香港(ジェットスター・ジャパンとバニラエアが運航)や那覇~バンコク(ピーチが運航)などに限られている。現状、首都圏や近畿圏からタイ、シンガポール、マレーシア、インドネシアなどへのノンストップ便は運航していない。
ANAホールディングスが2月1日に発表した2018-2022年度中期経営戦略の中で、2020年を目処にグループのLCCでアジアマーケットにおいて航続距離の長い小型機を使って就航することを表明した。片道7時間~8時間半で飛べる路線でスタートさせ、将来的には9時間の路線を目指すとのことある。現状、ANAグループのバニラエアとピーチのどちらが運航するのかについては検討中としたが、国際線中距離路線のLCCマーケットにもいよいよ進出する。
エアアジアグループもボーイング787の導入も検討している
エアアジアグループを率いるエアアジア・グループのトニー・フェルナンデスCEOは、今後の国際線の中・長距離路線において、現行のエアバスA330に加えて、大型機やボーイング787型機の導入も視野に入れている。更に現地の広報担当者によると、中部国際空港を拠点とするエアアジア・ジャパン(中部~新千歳線を運航)についても、国際線中・長距離路線を運航する際にはボーイング787を導入したいと発言しているそうだ。
航空機においても、現状では短距離しか飛ぶことのできなかった小型機のエアバスA320シリーズを改良したエアバスA321LR型機が、2018年第4四半期を目標に商業運航を開始させることを発表した。航続距離は最大7400キロとなり、東京~クアラルンプールやニューヨーク~パリなどをノンストップで飛行できるようになる。座席数も最大で240席まで可能となっており、LCCがこの飛行機を導入して、小型機で中距離国際線に投入する可能性も十分に考えられる。
シートはフルサービスキャリアよりも狭く、機内サービスなども有料であるが、少しでもお得に海外旅行に行きたい人にとって、中距離国際線のLCC便が増えることでよりお得に旅行に出かけられることになるだろう。