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日本の基幹システムのひとつである「日銀ネット」のセキュリティは最重要ながら使い勝手の良さも必要か

久保田博幸金融アナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

 日銀は資金や国債の決済が安全かつ効率的に行われるようにするため、コンピュータ・ネットワークシステムを構築している。これが「日銀ネット」とも呼ばれる「日本銀行金融ネットワークシステム」となる。

 日銀の本支店と参加金融機関は、日銀電算センターと通信回線で接続されており、全銀システム(全国銀行データ通信システム)や、手形交換制度、外国為替円決済制度などで決済処理された最終的な決済を行っている。証券決済システムとして国債の決済などもこれを通じて行っている。国債の入札なども日銀ネットの端末が使われている。

 私が直接日銀ネットに触れたのは、国債の入札の際の日銀ネットの端末操作であった。すでに30年以上も前のことであったので、システムそのものも入れ替わりつつあり(新日銀ネット)、最近の端末の事情については詳しくは知らなかった。ただし、当時の端末に触ってみての印象は、言葉は悪いが融通が利かないなあというものであった。

 これはそれだけ日銀ネットというインフラが国内の金融ネットワークの基幹でもあり、重要であるためである。特にセキュリティをしっかりさせなければならないためという理由はわかる。

 しかし、それに対してどうにかならないかという事例が出てきたようである。18日にブルームバーグは「在宅できないトレーダーも、日銀オペ対応に苦慮-最重要決済システム」という記事をアップした。

 コロナ禍にあって、政府は企業に在宅勤務の活用を呼び掛けているが、金融業界でもトレーディングフロアから自宅に移るトレーダーがいる一方、在宅勤務できないトレーダーもいる。その在宅勤務できないトレーダー、もしくは端末操作担当者に、いわゆる日銀ネットに関わる金融各社の担当者がいる。

 現在の各社の端末事情がどうなっているのか、細部まではわからない面もあるが、金融機関のディーリングルームには、証券取引所や日本相互証券などを結ぶ専用端末がある。さらにブルームバーグやロイター、QUICKなどの情報端末も含まれる。さらに別室に資金決済、日銀のオペ対応、国債入札のための日銀ネットの端末が設置されているものと思われる。

 この記事の「トレーダー」と称される人には、顧客との対応を行うトレーダー、その注文を受けたり、日銀の国債の買い入れや国債の入札(事務は日銀)に絡むいわゆるディーラー、さらにその注文を端末に入力する担当者などに分かれていると思われる。

 このうち国債の入札に絡むいわゆるディーラーや日銀ネットの端末を操作する担当者は、オフィスに設置された専用端末しか使えない。このため、政府が勧める在宅勤務が難しくなっている。国債の入札や日銀の国債買い入れは、どちらもない日が珍しいくらいであり、そうなると在宅勤務は難しい。

 さらに入力ミスを防ぐため、二重チェックの必要性から、少なくとも二人は出社しなければならないという決まりもあるようである。

 この記事によるとFRBやECBは在宅からのオペ参加を許容しているとか。コロナ禍はいろいろな社会の仕組みを再確認させることにもなっているが、これもそのひとつかもしれない。基幹ネットワークなだけにセキュリティは最重要ながら、それを使うものにとっては使い勝手の良いものにしてほしいことも確かであろう。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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