北朝鮮の600mm超大型ロケットの新型発射車両(装輪6連装型)が登場
9月13日、北朝鮮は昨日の12日朝に日本海に向けて複数発を発射した短距離弾道ミサイルの正体を公開しました。アメリカ側でKN-25と呼ばれている「600mm超大型放射砲(600mm超大型多連装ロケット発射機)」の新型発射車両が使用されています。なお同車両の初出は9月8日の北朝鮮の公式発表で先行して映像が出ていました。
600mm超大型ロケットは誘導ロケット弾の大きさが下手な短距離弾道ミサイルよりも大きいくらいで、ロケット弾と呼んでいるのは北朝鮮だけで、日米韓はこれを短距離弾道ミサイルに分類しています。
従来、実戦部隊用の600mm超大型ロケットの発射車両は装輪型(4連装)と装軌型(6連装)の2種類でしたが、新たな発射車両は装輪型(6連装)です。
※なおパレードのみに登場した600mm超大型ロケット装輪型(5連装)もあるが、試験発射で登場したことはなく、実戦部隊でも確認されたことが無い。しかし後にこの装輪型(5連装)は巡航ミサイル発射用として試験発射で登場。用途を変更した可能性が高い。
600mm超大型ロケットの新しい装輪型(6連装)
600mm超大型放射砲(KN-25)
- 装輪型(4連装) タイヤ式
- 装輪型(5連装) タイヤ式 ※パレードのみ登場で放射砲としては不採用か
- 装軌型(6連装) クローラー式(履帯式)
- 装輪型(6連装) タイヤ式 ※今回の新型
従来型の装輪型(4連装)はチェコのタトラ製トラック(T813 8x8)に非常によく似ています。タトラのトラックそのものなのか、あるいは模倣して生産したものです。新しい装輪型(6連装)は「火星11カ」弾道ミサイル(KN-23)用の車幅の広い発射車両(ベラルーシ製のMZKT-7930に酷似)とよく似ています。
※なお装輪型(5連装)の車両はアメリカのオシュコシュ社のトラックに酷似。これは巡航ミサイル発射用に用途が変更された可能性が高い。キャニスター(ミサイル・ロケット収納筒)の直径が同じと見られる。
関連記事:北朝鮮が地対地型の巡航ミサイル試験発射に初めて成功(2021年9月13日)
600mm超大型ロケット 装輪型(4連装)
600mm超大型ロケット 装輪型(6連装)
北朝鮮が600mm超大型ロケットの装輪型で新たな発射車両を登場させた理由は不明です。単純に6連装化で更なる火力を求めたのか、あるいは4連装型の運用あるいは生産ないし調達の面で問題が生じて切り替えたのか、いくつかの理由は想像できますが現時点で答えは分かりません。
なお9月12日の発射で600mm超大型ロケットが着弾した標的の場所は何時もの無人島でした。咸鏡北道花台郡の沿岸直ぐ沖の卵島です。卵島(알섬、アルソム)、位置座標(40.646706, 129.548286)
発射数は最低3発以上おそらく6発以下ですが、正確な数は不明です。飛距離は自衛隊の報告では水平距離350km・最大高度100kmでした。
600mm超大型ロケットは滑空機動を行わず通常の弾道で飛行します。単純な軌道なので迎撃されやすくなりますが、集中運用を行い発射数の多さで飽和攻撃を仕掛けて突破を図る設計思想です。同じサイズの発射車両の「火星11カ」弾道ミサイルが2発搭載なのと比べると、600mm超大型放射砲・装輪型(6連装)は3倍の発射数となります。
短距離弾道ミサイルと同等以上の大きさの超巨大なロケット弾を多連装発射機で運用する行為そのものが北朝鮮のみのものであり、世界唯一の存在と言えます。