中国西安市でロックダウン 人口1300万人の大都市で何が起きているのか?
12月23日、中国内陸部の大都市、陝西(せんせい)省・西安市で、新型コロナウイルスの感染が拡大し、ロックダウン(都市封鎖)が始まった。
西安市の人口は約1300万人と、東京(約1400万人)とほぼ同等。大規模なロックダウンは2020年1月に武漢市(人口約1100万人)で行われたときに次いで2回目。年末年始や2月の北京冬季五輪、春節という時期を前にして、中国各地では再び緊張が走っている。
ロックダウン前夜は大渋滞が発生
西安市は12月9日以降、新型コロナのデルタ株の感染者が急増し、22日までの累計感染者は230人を超えた。市中感染が広がっていると判断されたことから、西安市はロックダウンに踏み切った。オミクロン株の感染はまだ確認されていない。
ロックダウン前夜の22日夕方には帰宅ラッシュが始まり、午後5時ごろには市内で大渋滞が発生。現地メディアの情報によると、通常30分程度運転すれば帰宅できる人でも、帰宅までに4~5時間もかかった。
地下鉄なども大混雑し、スーパーマーケットも商品を買い求める客でいっぱいになるなど、一時騒然となった。
市内にあるレストランやホテル、オフィスビルなどはすべて消毒作業に入り、エッセンシャルワーカーを除く、ほとんどのオフィスは閉鎖、公務員も一部を除き在宅勤務となった。幼稚園から小中学校、高校、大学もすべて休校となり、空路、陸路の便もほぼ停止となった。
ただ、武漢市のロックダウンのときと大きく異なることがある。それは、2日に1回、1家族につき1人、日用品の買い出しが認められたことだ。
武漢のときにはマンションの敷地内から一歩も外に出られない、完全封鎖のロックダウンだったが、今回はそこまでではない。この「差」はとても大きい。
市外への外出は特別な事情がないと許可されないが、日用品の買い出しが認められていることによる安心感と、武漢での経験があることで、市民は比較的落ち着いているようだ。
西安市民の様子は?
西安市に住む筆者の唯一の知人女性に電話で様子を聞いてみたところ、以下の答えが返ってきた。
「昨夜のスーパーは買い物客が殺到して大変でしたが、それ以外はとくに困ったことはありません。すでに1週間以上前から、周囲の人々の間では、このような状況になるだろうと予測されていました。
今年の夏ごろからデルタ株の感染が各地で起きていたこともあり、我が家の大型の冷凍庫には大量の食料品を常備しているので、1カ月くらいは食材に困ることはありません。いつでも準備はできています。
小学生の子どもにはオンラインで勉強させていますし、夫は自営業なので、電話とパソコンで仕事ができます。昨日、家族全員PCR検査も受けました。
しばらく様子を見ますが、日用品の買い出しには出かけられると聞いているので安心ですし、プチ・ロックダウンのような状況は、これまで各地で経験済みなので、大丈夫です。とにかく、できるだけ外出を避けます」
気がかりなのは、もう1つの病気
今年の夏以降、南京など各地で起きたデルタ株の感染拡大を受け、「いつ、何が起きるかわからない」「いつ封鎖されるか……」という覚悟ができている中国人が多く、今回の大規模なロックダウンにも慌てふためかないという人が多い。
しかし、心配事もある。このところ野ネズミを介して感染する「腎症候性出血熱」が流行していることだ。
現時点で西安市は感染者数を公表していないが、ネット上ではこちらのほうを心配する人もいて、「本当に大丈夫なのか?」といった書き込みもある。
現地では、毎年冬になると感染が拡大し、人から人へは感染しないとされている病気だが、初期はインフルエンザと似たような症状で、悪化すると急性腎不全になることもあるという。
現地の知人は「問題はロックダウンがどれくらい長引くかわからないということ。そして、別の病気がどこまで拡大するかわからないということです」と話している。
中国のお正月は2月の春節だが、近年は西洋式にクリスマスや1月1日の新年を祝う人も増えている。だが、西安市民1300万人にとって、今年は我慢のクリスマス、そして新年になりそうだ。